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サービスエリアの空の下 26

すっかり張り切っている男性は、私に尋ねてきました。

「三匹の猫たちの誰かが動き出すまでの間、ほかに手伝えることはありますか?」
「現時点では、大丈夫です。それもよりも、張り込みはどれだけの時間続くか分かりません。すべては、彼らの気分次第だからです。ですので、今のうちにお手洗いに行っておく方が良いと思います」
「分かりました」
「それと、飲み物や食事類も用意なさっておいた方が賢明です。お戻りになるまで、私はこの場に待機していますので」
「はい。じゃあ、行ってきます」

男性は、トイレに向かって小走りして行った。

幸いにして、この日の天候は悪くないので、張り込みをするにはもってこいだ。
多少の風が吹いているものの、暑くもなければ寒くもない。

ただ、夜を迎えたとはいえ、サービスエリアにはまだ多数の人たちがいる。
場所柄、まったく人気がなくなることはないだろう。

それでも、建物外の敷地で揚げ物類を売っているブースは、もはや店じまいの支度を始めている。
完全に店じまいになれば、三匹の猫様たちに与える目的で揚げ物類を購入する人はいなくなる。
加えて、もはや陽が沈んでいるので、三匹の猫様たちは日中よりも人目につきにくい状況である。

上記を加味すれば、三匹の猫様たちを無事保護するには、これからが正に勝負の時間といえるので、私は気合を入れ直した。

そうこうしているうちに、男性が戻ってきた。
手には、ペットボトル入りの飲料とボトルガムを持っている。

「食事類は大丈夫ですか?」

私の言葉に、男性は笑った。

「仕事の後はいつも、ちゃんとした晩飯は食わないんですよ。とはいっても、代わりに酒を欠かすことはないんですがね」
「そうなんですね」
「あ、でも大丈夫ですよ。今晩はもちろん、晩酌よりも猫たちの保護の方が最優先なので」
「焦らず、慌てず、できるだけ早期に無事保護ができるように、お互い頑張りましょう」
「はい!」
「それでは、私もお手洗いと飲み物を買いに行かせてもらいます」
「どうぞ、どうぞ」
「もしも彼らに動きがあったら、すぐに電話をください」
「分かりました!」

お手洗いに向かう途中に立ち止まり、振り返って男性の様子を見ると、ベンチには座らずに立ちっぱなしだった。
猫様たちのねぐらの方向を、真っ直ぐに凝視している。

あれじゃあ、気合の入り過ぎで、集中力が長持ちしそうにないなあ……。

一抹の不安を抱いたが、男性の気持ちは分からないでもない。
私は再び歩き出した。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉