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サービスエリアの空の下 27

お手洗い後に飲み物の買い物を済ませて売り場を出た際も、男性はまだ立ったままであった。
三匹の猫様たちのねぐらに向けて、熱い視線を注いでいる。
私がそちらに近づいても尚、男性は視線を固定したまま報告してきた。

「ここから見える範囲では、三匹に動きはありません」
「そうですか。ところで、彼らのねぐらがある草むらの向こう側は、どうなっているのかご存じですか?」
「草むらの先はフェンスで囲われているはずです」
「そのフェンスは、周辺に生息する野生の生き物が通り抜けできそうなつくりですか?」
「いや。網目の細かさからするに、潜り抜けるのは無理だと思います。猫でも難しいんじゃないかと……」
「では、よじ登ることは?」
「うーん……それなら、できるような気がします」
「フェンス際には、毎日近寄るのですか? たとえば、掃除などで、ですとか」
「いや、基本的には近寄ることはありません。メンテナンスですとかは専門の人間が担っているので。こっちの仕事は、サービスエリア利用者が行き来する範囲の清掃などが主ですから」
「なるほど……」

私はさらに尋ねた。

「このサービスエリアの敷地外、つまりフェンスの向こう側は、どういう立地になっているのですかね?」
「フェンスの向こう側にも、草むらが続いているはずです。その先は、幹線道路が走っています」
「民家などは?」
「ありますよ。ただ、昔ながらの家々や、今はシャッターが下りっぱなしの店がいくつか建っているだけで、廃れた街並みといったところでしょうか。あとは畑がちらほらと点在している感じです」
「分かりました」

ねぐらにいる三匹の猫様たちがフェンスをよじ登り、そちら方面まで足を延ばす可能性がゼロとはいいきれない。
逆に、そちら方面の猫様たちが、サービスエリア内の敷地にやってくることも、なくはないだろう。
とくに、発情期に差し掛かった時期ならば、移動距離が延びることは大いに考えられる。
その可能性の裏付けを取るために、このサービスエリア内で、今までに三匹の猫様たち以外の猫様を見かけたことがあるかどうか、私は男性に尋ねた。

「うーん……ないですね。もっとも、仕事が終わって帰宅後には、どうなのか分かりませんが」
「ほかの従業員の方は、どうでしょう?」
「あの三匹以外の猫がいたとかいう話は、聞いたことがありません。ちなみに、民家などが建っている幹線道路付近でなら、猫を見かけたことは何回もあります。生きている猫もいれば、残念なことに車に轢かれて亡くなっている状態の猫も、です」
「そうですか……」

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉