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サービスエリアの空の下 3

夫婦が露骨な不快感を示している理由は、すぐに明らかになった。
二人の視線を辿った先には、確かに一匹の猫様がいて、私の視界にも入ったからだ。

その猫様は、白猫の成猫様だった。
とはいっても、全身に汚れが目立ち、まだらな薄茶色といった具合だ。
それだけならば、『薄気味悪い!』とか『確かに気持ちわりーな……』と、夫婦が発することはなかったかもしれない。

ではなぜ、その白猫様を見て、夫婦は嫌悪感を露わにしたのか。
理由は、白猫様が重度の皮膚病を患っていたからである。
体表の半分弱が脱毛しており、赤くただれている部分は、掻き毟ったあとだと見受けられた。
目の周りには目ヤニがこびりついており、鼻の辺りには膿んだような鼻水が付着している。
その様を見て、『薄気味悪い!』とか『確かに気持ちわりーな……』と、夫婦は言い放ったのだ。

「もう行こう。見てるだけで鳥肌が立ってくる」

旦那の提案に、奥さんは同調した。

「そうね。二匹にエサをあげても、どうせ、あの薄気味悪い猫が横取りしそうだし」

夫婦は結局、その白猫様から逃げるようにして去って行った。
そして、自分たちの”串もの”を二本買い、満面の笑みで食らいついていた。
白猫様のことなど、はじめから存在していなかったように、夫婦は陽気な歩みで人ごみに紛れていく。

その背中を見送っていた私は、マナー違反を注意しようと思っていたことを忘れ、憂いに沈んだ。

この白猫様になにがあって、このような状態になってしまったのか、詳細は分からないが……。
夫婦が与えようとしていた”串もの”や、すでに誰かに与えられていた揚げ物の類だけを食しているため……なのかもしれない。
先天性の疾患を抱えているため……なのかもしれない。
ほかの猫様とのケンカで負った傷が原因……なのかもしれない。
それらの複合的な要因……なのかもしれない。

いずれにしても、だ。
一つだけいえるのは、白猫様自らが望んでこの状態になったわけではない、ということだ。

こんなに悪化する前に適切な治療を受けていれば、もっと軽症ですんだかもしれないし、完治を目指せたかもしれない。
とにもかくにも、この状態を見る限り、白猫様は激しい痒みや痛みに苦しんできたであろうことが、容易に想像できた。

野良猫様故の宿命だと思えば、それまでかもしれない。
似たような状態で生きる野良猫様が、あちらこちらにいるのは確かだ。
それらすべての猫様たちを救えるほどのチカラを、残念ながら今の私は持ち合わせていない。
その現実と無力さが、私の心をさらに重くした。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉