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サービスエリアの空の下 4

白猫様の様子を見ながらしばらく佇んでいると、初老の男性に話しかけられた。

「どうも、こんにちは」
「こんにちは……」

着ている制服からするに、サービスエリア内で働く方のようだ。
日焼け顔にたたえた笑みには、いかにもな優しい雰囲気が漂っている。

「猫、好きなんですか?」
「はい。好きです」

短く答えた私に、男性は話を続けた。

「うちにはねえ、ずっと猫がいたんですよ」
「そうなんですか」
「猫を飼ったことありますか?」
「はい。今現在は、兄弟二匹と暮らしています」
「いいですね。うちの猫もオスで、名前は”シロ”っていいましてね、昨年、18歳で亡くなりました」
「そうですか……」

男性は、共に暮らしていた”シロ”くんとの思い出話を、いくつか教えてくれた。
懐かしむように、けれども悲観的な雰囲気を感じさせることのない口ぶりであった。
そのわけは、おそらく至ってシンプルなものだろう。
”シロ”くんは幸せに生きた、と心の底から信じているからに違いない。

「”シロ”は、うちの納屋でうまれました。うまれて数ヶ月は、母猫と三匹の兄妹猫みんなで過ごしていたんですがね、ある時から、みんなバラバラに生きることを決めたようです。外で生きる猫にとってそれは、ごく自然な成り行きなんでしょうけどね」
「そうですか。”シロ”くんだけは、残ってくれたんですね」
「残ってくれた、というよりは、残りたかっただけだと思います」
「なぜですか?」」
「”シロ”はみんなの中で一番臆病な性格でしたから、知らない場所で一人で生きていく自信がなかったんでしょう」

柔和な眼差しで語る男性からは、”シロ”くんに寄せる確かな親心が溢れていた。

「”シロ”がそんな性格なものだから、時々ね、母猫や兄妹猫たちが心配して様子を見に来るんですよ。『元気にやってるか?』って具合に」
「家族ならではの光景ですね」
「まあ、”シロ”の様子見ついでに、こっちにも、聞きたいことがあったようですけど」
「どんなことです?」
「”シロ”の暮らしぶりについてです。『臆病は治ったか?』ですとか、『エサはちゃんと食べているか?』ですとか。こっちが伝え話している最中は、どの猫も皆、じっと聞いていましたよ。で、伝え終わると、”シロ”に近寄って、『じゃあ、また今度』と、必ず挨拶して帰って行くんです」
「なるほど。”シロ”くんは、みんなに愛されていますね」
「”シロ”本人もそれを自覚しているようで、帰って行く母猫や兄妹猫を追いかけたりしませんでした。いつも自分を気にかけてくれる存在がいる、という安心感が、そうさせていたのだと思います」

”シロ”くんに直接会ったことはないが、微塵の疑いなく、私もそう思った。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉