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サービスエリアの空の下 44

私はしゃがんだ姿勢から立ち上がり、手作り食を置いた、つぎの場所に茶色猫様を誘導した。
茶色猫様は私の足に身体をすりつけながらついてきた。

”どこ? どこ? どれ? どれ? もっと食べたい!”

随分、人懐こい。
きっと、飼い主様の愛情をたっぷりもらいながら暮らしているのだろう。

”キミの家はあっちなの?”

広がる草むらの先に建つフェンスの向こう側を指さしながら私が聞くと、茶色猫様は尻尾の先をピンと揺らした。

”こっちには、よく来るのかな?”

私の質問に、またもや、茶色猫様は尻尾の先をピンと揺らす。

”さっき食べたものは不味かった?”

今度の質問には、尻尾は無反応だった。
それならばと、もう一つ質問を重ねてみた。

”草むらの中には、キミだけしかいなかった?”

尻尾は動かない。
ひょっとしたら、草むらの中で白猫様なり二匹のキジ白様たちを見かけたのかもしれなかった。
それにしたって、草むらの中に立ち入れない以上、この目で確認する術はない。

ほどなくして、手作り食を置いた場所に着いた。
私は屈み、手作り食を示しながら、ダメもとで茶色猫様にお願いした。

”もし、ほかの子に会ったら伝えてほしいんだ。これ美味しい、よって”

茶色猫様は尻尾の先をピンと揺らし、手作り食に鼻を寄せて嗅ぐと、器用に舌ですくいあげて食した。
食後は口周りをぺろりとして、再び草むらの中へと入って行った。
その後ろ姿に、私は告げた。

”いくら美味しいからって、キミ自身は、捕獲器の中のエサにつられて入らないようにね!”

私の忠告が茶色猫様に通じたかどうかは、神のみぞ知る。
捕獲器に入るのを確実に防ぐには、茶色猫様をこの場で捕まえるしかないだろう。
ただ、いくら人懐こいからといって、それを強引に行うわけにはいかない。
三匹の保護という目的があるからといって、茶色猫様には自由に行動する権利があるわけだし、それを奪う権利が私にあるとは思わないからだ。

茶色猫様が食した手作り食の残骸が地面に残っていないことを確認してから、私は来た道を戻ることにした。
草むら沿いの監視を再開しようと歩き出す。
すると、視線の先、喫煙所付近の草むらから、茶色猫様が再び現れた。
茶色猫様が、一番初めに手作り食を食べていた場所である。

”そこのはもう、さっきキミが食べたじゃん”

この手作り食はそんなに美味いのか、と思わず笑みがこぼれた私を見上げ、茶色猫様が鳴いた。

”分かったよ。もっと食べたいんだろ?”

茶色猫様は、もう一度鳴いた。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉