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サービスエリアの空の下 45

”ごめんね。ぜんぶを、キミにあげるわけにはいかないんだ”

私の手元に残っている手作り食には、限りがある。
いざ、白猫様や二匹のキジ白猫様たちを保護する際に取っておきたかったその分を差し引いて考えると、茶色猫様にあげることができる量は、あと二口くらいだろう。
茶色猫様にそう告げて、二口分の手作り食を、私は手に取った。

”ほら。これで最後だよ。ゆっくり味わって食べな”

とはいったものの、この子にかかわらず、猫様がゆっくりと味わって食事をすることなどない。
目の前にエサがあれば、無心で食らいつく。
とりわけ野良猫様に至っては、それが普通である。
茶色猫様は誰かに飼われているとはいえ、こうして外で過ごす時間があるわけだから、感覚的には野良猫様のそれに近いのだろう。
手作り食を手から離すと、あっという間に平らげてしまった。
食後に口周りをぺろりとすると、もう一度、茶色猫様が鳴いた。

”さっきもいったけど、残念ながら、おかわりはないよ”

私の言葉が通じて諦めたのか不貞腐れたのか、茶色猫様はぷいっとそっぽを向いた。

”いや……そこまで、機嫌を損ねないでほしいんだけどな。残りの手作り食はね、ほかの子たち用に残しておかなきゃいけないんだ”

茶色猫様は私に目を合わせることなく、そっぽを凝視したまま、また鳴いた。
その姿があまりに真剣味を帯びていたので、茶色猫様の視線の先が気になった私は、それを辿って目を動かした。

そこには、私が保護しようとしているキジ白猫様のうちの一匹がいた。

「あっ……」

驚きのあまりに短く発した私とほとんど同時に、茶色猫様が鳴いた。
私は目を見開きながら、茶色猫様に聞いた。

”ひょっとして、連れて来てくれたの!?”

茶色猫様の尻尾の先が、ピンと揺れた。
間髪入れずに、私は茶色猫様にいった。

”ありがとう! あっちの方にも、同じものが置いてあるから食べていいよ”

私が指さしたのは、手作り食を一定間隔に置いた、べつの場所である。
そこに向けて、茶色猫様は歩いて行った。
それを横目で確認後、私は一口分の手作り食を手に取り、キジ白猫様に語りかけた。

”さっきの子に、教えてもらったでしょう? これ、美味しいから食べてみなよ”

握っていた手作り食を自分の足元に置いて、私は中腰で後退りした。
そのまま十歩目くらいで止まり、しゃがみ込む。
すると、キジ白猫様は鼻をクンクンしながら、手作り食に近寄って行く。

よおし……そのまま、そのまま……。

キジ白猫様が手作り食を口にしてくれるのを、私は強く祈った。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉