私が祈るまでもなく、キジ白猫様はあっさりと手作り食を口にした。
贔屓目かもしれないが、満足そうな表情に見える。
よし!
私はすかさず、持っていた手作り食を一握り手に取った。
そして、キジ白猫様を招くように手を伸ばし、やさしく声をかける。
「ほら、まだあるよ。食べな」
キジ白猫様が気づいて、私に近寄ってきた。
手作り食を手に持ったまま与えてみるか……。
はたまた、手作り食を地面に置いて、私自身が離れるべきか……。
事ここに至って、私は逡巡した。
それを意に介さず、キジ白猫様は、どんどんと距離を縮めてきた。
ならば、試してみる価値はありそうだ。
私は、手作り食を手に持ったまま与えてみる決断をした。
心のうちで、キジ白猫様への想いを念じる。
”大丈夫。怖くないよ。今さっき食べたものと同じものだから、よかったら食べてみて”
それが通じたかどうかは定かではない。
だが、キジ白猫様は事実、私の想い通りに、手の平から手作り食を食べてくれた。
手の平に、キジ白猫様のざらざらした舌の感触が伝わる。
やがて、余すことなく手作り食を完食したキジ白猫様が、私を見上げてきた。
”美味い。美味い。もっと食べたい!”
私には、キジ白猫様がそういっているように思えたので、その要求に応じることにした。
”ちょっとまってね。今、用意するから”
”早く! 早く! お腹がペコペコだ!”
キジ白猫様は大胆にも、地面についていた私の膝に、前足を乗っけてきた。
”……分かったよ。ほら”
再び手に取った手作り食に、キジ白猫様はがっついた。
この様子なら、いけるかもしれない!
私は手作り食を持っていない方の手で、キジ白猫様の横っ腹辺りをゆっくりと撫でてみた。
抵抗はない。
手作り食を食べるのに夢中と見える。
これなら、もしかして……。
満足気なキジ白猫様は、ゴロゴロと喉を鳴らしている。
手の平の手作り食は、もうほとんど残っていない。
こうなったら、今しかない!
キジ白猫様に私が抱く機微を悟られないためには、迷いを捨てるべきである。
そう判断した私は、キジ白猫様の保護を決行することにした。
先ずは、キジ白猫様を撫でる手を徐々に頭に近づけ、耳の下を指で掻いてみる。
大丈夫そうだ。
警戒はしていない。
つぎに、その手を、キジ白猫様の胸辺りに滑らせてみる。
これも大丈夫そうだ。
嫌がる素振りをしない。
手作り食はすでに完食したものの、キジ白猫様は私の手の平をペロペロと舐め続けている。
いよいよだ!
私はついに腕を回し、キジ白猫様を抱きかかえようと試みた。
〈続く〉
あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように
富山桃吉