男性が発した言葉に、思わず私はこぼした。
「マシ……」
「はい。餓死するよりも、せめてお腹を満たせる方が、まだマシだとは思いませんか?」
私の目を真っ直ぐに見て、男性は続けた。
「実をいいますと……この二匹のキジ白猫は、皮膚病を患っているこの白猫の子どもなんですよ」
「そうなんですか」
「ええ。この白猫は、お腹に子猫を身ごもった状態で棄てられていたんです」
「え……」
男性がいうには、ある日の仕事中に、ガムテープでグルグルに巻かれた段ボール箱を偶然発見したらしい。
場所は、先ほど白猫様が姿を現した草むらの奥だという。
つまりは、人目に付かないように隠されていたわけだ。
ちょうどその辺りから猫様の鳴き声が聞こえてきたので、不審に思った男性は、段ボール箱に巻かれたガムテープを剥がし、中を開いた。
その中に、この白猫様がいたそうだ。
「このサービスエリアは、一般道からは入ってこれません」
「ということは、わざわざ高速道路を利用して、棄てにきたわけですね」
「段ボール箱の中には、エサも水も入っていませんでした。まったく、酷い奴がいるものです」
「虐待ですよね。腹立たしい限りです」
「おそらくは、元々誰かに飼われていたと思うんです」
「首輪でもついていたのですか?」
「いや。でも、段ボール箱に詰め込まれて棄てられたっていうのに、人慣れしているんですよ、この白猫は。とはいっても、抱っこしようとすると逃げてしまいますが」
「そうなんですね……」
男性がいうように、白猫様には元々飼い主様がいたとして、だ。
その元飼い主様が白猫様を棄てた理由を探っても、もはや、真相を知ることはかなわないだろう。
だが、私は断言する。
どんな理由があったとしても、元飼い主様が白猫様に行った仕打ちは断じて許されることではないし、まったくもって同情の余地はない。
憤懣やるかたない思いによって顔を引きつらせた私に、激しく同調したのだろう。
男性の声音も、一層の怒気を増した。
「偶然とはいえ、もしも段ボール箱に気づかなければ、この白猫は、それこそ餓死していたに違いません。当然、キジ白猫たちも、無事に生まれてくることはなかったでしょう……」
「仰る通りですね」
「発見した時にはすでに、この白猫の皮膚病は進んでいました。なんとか捕まえて動物病院に連れて行ってやろうとも思ったんですがね。さっきもいったように、抱っこはさせてくれなくて……。しかも、ここは高速道路です。無理に捕まえようとして、万が一、白猫が車道に逃げたら車に轢かれてしまう危険も考えられますから……」
〈続く〉
あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように
富山桃吉