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サービスエリアの空の下 64

草むらの中へじっと視線を向けたままの男性は、少し間を空けてから言葉を繋いだ。

「茶色猫の鈴音が聞こえたのが空耳だとは思いません。二人共が聞こえたのだから、間違いはないでしょう」
「では、なにが引っかかっているのですか?」
「いやあ……」

この期に及んでも躊躇しながら、男性は続けた。

「あの鈴音にですね、聞き覚えがあるような気がしてならないのです」
「聞き覚えが?」
「はい」

私としては、特段、変わった鈴音だとは思わなかったのが正直なところである。
それでも、それは口にせず、男性の話の続きを待った。

「……いやね、鈴音のわずかな違いを聞き分けられるほど、耳がいいわけではありませんがね。それでもさっきの鈴音だけは忘れることはないのですよ」
「それはその……鈴音の高さや低さ、もしくは鈴音の大小の違いから、そう思われたのですか?」
「高低差や大小というよりは、リズムですかね」
「リズム……」

私は、自分が聞いた鈴音のリズムを思い出そうと試みた。
独特なリズムだったと断言はできないが、所謂、一定のリズムではなかった気がする。

だが、それはそうだろう。
茶色猫様が、常に一定のリズムで動いていたわけではないからだ。
事実、その動作は自由気ままで、動き方によっては鈴音がすることもあったし、しないこともあった。

では、男性と共に聞いた、先ほどの鈴音はどうであっただろうか……。
私自身と共に暮らす兄弟猫様の首輪にも小さな鈴が付いているので、彼らの鈴音が聞こえるシチュエーションを頭に思い浮かべてみた。
彼らが脚で首元を掻いたり、グルーミングを行っている最中に鈴音が聞こえることがある。
そのほかといえば、止まっていた状態からばっと動き出した瞬間などにも鈴音が聞こえる。
私は、そのことを男性に話した。

「どちらかといえば、先ほどの鈴音は、急な動き出しのその初動に鳴ったもののように感じたのですが」
「同じく、そう思います」
「ということは、そのような動きのリズムに聞き覚えがあるということですか?」
「その通りです。あの動き出しのリズムが、とてもよく似ているのですよ。”シロ”に……」(※”シロ”くんの詳細については、過去ブログ『サービスエリアの空の下 4』を参照)
「”シロ”くんは、鈴を付けていたのですか?」
「はい。さっきお宅さんがいっていましたが、”シロ”が止まっていた状態からばっと動き出した時に鳴る鈴音にそっくりだったなあと。あの鈴音は……」
「そうなのですね」

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉