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サービスエリアの空の下 69

男性が、一応の納得を得るまで待ってあげるか……。
キジ白猫様の戻り予想を優先して、今すぐ男性を草むらの中から立ち去らせるか……。
懊悩の挙句、私が下した決断は後者であった。
鈴音を”聞かせてくれた”のが”シロ”くんであったかどうかは、なにをもってして実証されるのかが、私には分からないからである。
この機会が最後で、男性のこの先の人生において二度と聞けぬ鈴音であるわけではないだろうと思ったのも、一つの理由であった。
正味なところ、それの明確な根拠を示せない。
だが、男性が”シロ”くんを大切に思う限りは、その鈴音を聞ける機会があるような気がしてならなかった。

私は、男性に電話をかけた。

「こちらでは鈴音は聞こえてきませんが、そちらはどうですか?」
「……同じく、聞こえてきません。”シロ”も茶色猫の姿も見つけられません」

悔しさが滲んだ返答を吐き出した男性に、私は促した。

「では、こちらに戻ってください」
「……」

無言で拒否を示す男性の心情を強引に鷲掴みするように、私は告げた。

「Hさん宅の敷地内に入ったと思われるもう一匹の子が、そろそろ草むらの中に戻ってくる頃かもしれません。そうしたら捕獲器に近づくかもしれないので、その近辺に滞在しつ続けることは得策とはいえません」
「……はい……」

もっともな私の意見に反論の術はないのか、男性は短く返事をして電話を切った。
間もなくして私の視界に現れた男性は、俯き加減のまま草むらの中から出た。

その姿に胸が痛んだ私は、慰みの情を交えた励ましの言葉をかけた。

「今するべきことの第一優先は、最後の一匹を保護してあげることです。車内にいる二匹のためにも、やれることを先ずは頑張りましょう」
「……はい」

男性は、自分を納得させるように小さく何度も頷く。
それから、私に指示を求めてきた。

「つぎに、どうすればいいでしょうか?」
「そうですね……」

さしあたっては、捕獲器のフラップが閉まるカシャンという音を聞き逃さないように、この位置での張り込みが現実的であろう。
その役は一人で充分だ。
張り込みしている間に、ひょっとしたら鈴音がもう一度聞こえるかもしれない……。
不確かで僅かかもしれないが、その可能性があるかも分からないので、男性にその役をお願いするつもりだ。

一方の私は、どうするか……。
当初の予定通り、Hさん宅周辺の立地確認に向かうかどうか悩んだ。
私がこの場所を離れている間になんらかの動きがありそうな予感もあったから、尚更であった。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉