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サービスエリアの空の下 76

私の足は、ほぼ一直線に喫煙所を目指していた。

朝を迎えたサービスエリア内には、行き交う人間の数が深夜帯よりも確実に増えている。
そのせいもあって、喫煙所には、五人のドライバーのほかにも数人がいた。
その中の誰もが、私が鈴音を頼りに歩いていることや、キジ白猫様を保護しようとしていることを知る由もない。
しかしまあ、知ったところでキジ白猫様の保護に協力をしてくれるわけではないだろうし、かといって意図的に邪魔してくるわけでもないはずだ。

ほどなくして、喫煙所まで10メートルくらいの位置に私は迫った。
この間、喫煙所には何人かの出入りがあったが、五人のドライバーはまだ喫煙所内にいる。

私の耳には、断続的に鈴音が聞こえ続けていた。
その音量は確かに大きくなっているし、聞こえてくる方面のズレもない。
確認のために喫煙所の周りをぐるりと歩いてみたが、現時点で鈴音が鳴っている元の位置は、どうやら喫煙所で間違いないようだ。

けれども、キジ白猫様も茶色猫様も、未だ現れることはなかった。
幽霊や心霊現象に関する知識について乏しい私には、”シロ”くんの存在も感じられない。

だがしかし、だ。
上記に書いた通り、私の耳に鈴音が聞こえることは確かである。

それでも、である。
鈴音が聞こえるからといって、何の存在も目視できていない以上、進展があったとはいえない。
その点を慮れば、今はまだ、休憩中の邪魔をしてまで男性に連絡を入れる必要はないだろう。
そう考えた私は、しばらくは動き回らず、喫煙所付近で様子を見ることにした。

それにしても。
五人のドライバーがいる喫煙所から、なぜに鈴音が聞こえてくるのだろうか……。
例えば、五人の内の誰かがキーホルダーかなにかに鈴を付けていて、それが聞こえているなら理解できる。

しかし、それは正しくない考えだ。
理由は単純で、五人のドライバーがフードコート内へ向かった後に、私は鈴音を聞いたからだ。
その時の事実として、鈴音が聞こえてきた方面は、彼らが、それぞれの車を駐車した位置からだった。
だからこそ私は、いつのまにか茶色猫様がそちら方面に移動したのかもしれないと考え、五台の車に向かい歩いて行ったわけである。

しかも、だ。
五人のドライバーがフードコート内に滞在している間も、私の耳は鈴音を捉え続けていた。
であるからして、五人のドライバーのうちの誰かがキーホルダーかなにかに鈴を付けていて、それが聞こえているという仮説は成立しない。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉