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サービスエリアの空の下 79

「実はですね、休憩中に、あの鈴音が聞こえてきたんです」

男性のいった字面の意味は、もちろん分かる。
けれども、現実的に考えて、フードコート内であの鈴音が聞こえたといわれても、さすがに、すんなりと承服することはできない。
常識的にいえば、フードコート内にいた誰かが持つ鈴音が鳴ったのを、男性が聞き間違ったのであろう。
サービスエリアの空の下 78』で綴ったように、私の予想が当たっていれば、男性は今もまだ、鈴音を”聞かせてくれた”のが”シロ”くんであると信じている節がある。
その心理状態や、夜通しの捜索活動での疲労も相まり、空耳としての鈴音が聞こえた可能性を排除できない。

そんな考えが過ぎった私に、男性は続けた。

「いやあ、フードコート内にいるのに、まさかあの鈴音が聞こえてくるわけがない、とはじめは思ったのですがねえ……。その後にも、二度、聞こえてきたんですよ。だから、あの鈴音を聞いたのは、都合、三度です。そうなると、ただの聞き間違いには思えなくてですね、休憩を切り上げてここに来たわけです」

私の考えをまるで見透かしたかのような内容だったので、驚きで言葉を返せずにいると、男性は聞いてきた。

「ところで……ここに居たということは、ひょっとして、お宅さんもあの鈴音が聞こえてきたのですか?」
「はい。そうなんです。鈴音を頼りに歩いてきました」

・男性が休憩をしている間、私が入れ替わって張り込みに着手していると、不快極まりないエンジン音を撒き散らしながら、五台の車がやってきたこと
・先ほど草むらの中に立ち入っていた金髪男を含む五人のドライバーが、車から降りてフードコート内に入ったのを見送ると、彼らが駐車した五台の車の方面から鈴音が聞こえてきたこと
・ところが、駐車している五台の車に近づくと鈴音の音量が時に小さくなったり、聞こえてくる方面にもズレが出てきたので、方向転換したこと
・方向転換後も、鈴音の音量と聞こえてくる方面を頼りに歩いていると、五人のドライバーがフードコート内から出てきて、喫煙所に向かったこと
・やがて金髪男だけが喫煙所から出てきて電話を始めると、大した意味もなく草むらの中に入っていったこと
・理由は分からないが、金髪男の周辺から鈴音が聞こえてきたこと

上記を私が説明して聞かせると、男性は腕組みをした。

「なるほどですね。それで、あの金髪男を注意しようとしていたわけですか」
「そうです」
「うーむ……」

男性は唸るように息を吐いた。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉