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サービスエリアの空の下 98

男性の元を離れて、私は自分の車を駐車している場所へと向かった。
すると、もう少しで到着する距離に来た近づいた時、男性から電話がかかってきた。

ん……どうしたんだろう?

不思議に思った私は、歩きながら電話に応答した。

「はい。どうしました? 」
「あ、あのですね! 今!」

のっけから興奮して話す男性に、私は聞いた。

「落ち着いてください。なにか動きがあったのですか?」
「あのですね、今ですね、草むらの中に見えたんです!」
「なにが、ですか?」
「”シロ”の姿が、です!」

思わず、私は歩みを止めてしまった。

「はい? ”シロ”くんを……ですか?」
「そうです! ”シロ”をこの目で見たんです!」

言葉の響きからして、男性がウソをいっている雰囲気は感じられない。
決して、ふざけているわけでもないだろう。

だがしかし、である。
正直なところ、男性のいっていることを、無条件で受け入れることができない自分がいた。
それどころか、気が触れてしまったのか、とさえ思い、急に心配になってきた。
そうはいっても、だ。
今の向上鯛の男性に冷静さを取り戻させることは、そうそう簡単ではないだろう。
私はとりあえず、”シロ”くんを目撃した際の状況を男性に訊ねた。

「ちなみにですね、”シロ”くんはどんな様子だったのでしょうか?」
「歩いていました」
「……”シロ”くんで、本当に間違いありませんか?」
「見間違いではありません! あれは”シロ”です!」

疑い深い私に苛立ち、男性の語気が強まった。
とはいえ、私の方としても、やすやすと怯むわけにはいかない。
刑事が行う事情聴取よろしく、努めて形式的に続けた。

「つまり、目撃したのは幽霊状態の”シロ”くん、というわけですよね?」
「まあ……それはそうですが……」

男性の威勢を削いだ数瞬の間を狙って、私は問う。

「ところで、草むらの中を歩いていた”シロ”くんは今、まだ視界に入る位置にいるのですか?」
「いや……今さっき、草陰で見えなくなってしまいました。あの、今すぐこちらに戻ってきては頂けませんか?」
「……なぜ、です?」
「”シロ”を追いかけたいのです。早くしないと遠くへ行って、見失ってしまいます。だから、張り込みを代わって頂けませんか? お願いします!」

いよいよ正気を失ってしまったかのように、男性は必死で願い出てきた。
これはおそらく、金髪男との接触のせいだろう。
男性の様子がこのままでは、とてもじゃないが、この先まともな張り込みは難しそうだ。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉