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”巡る”・”恵まれる”・”繋がる” 3

「つぎの子が来店するまで、あと2時間ちょっとかあ……」

独り言のようにいった岡村が、私を見る。

「今のうちにランチ済ませておこうか?」
「そうだね」

同意した私の目を、岡村が覗き込んできた。

「なにを食べるつもり?」
「え? うーん……どうしようかな……そっちは?」
「うーん……」

しばしの間、二人して考え込む。

仕事柄、私たちは毎日決まった時間にランチタイムを取れるわけではないし、ご予約状況によっては、食事をしている暇さえない。
そうはいっても、だ。
昔から、きっちりと食事をしなくても我慢できる体質なので、食事ができないほど忙しくても、さほど困った事態だと私は思わない。

どうしようもないくらいに忙しい場合は、もちろん、岡村だって食事の我慢くらいはできている。
けれども、無理は体に毒なので、岡村やほかのスタッフには食事を取ってほしいと、私は常日頃から思っている次第だ。

散々悩んだあげく、岡村が言った。

「……じゃあ、決めた!」
「なにを食べることにしたの?」
「任せる」
「……なにを?」
「ランチに食べるものを」
「は?」
「決めてもらうことに、決めた!」

要するに、なにを食べるかを自分で決められないから、私が食べるものと同じものにする魂胆らしい。
たしか、私同様、岡村も食べ物の好き嫌いはなかったはず。
なので、こっちがメニュー選びに気を使う必要はない。
私は、岡村の要望を受け入れた。

「蕎麦にするつもりだけど」
「え、また? たまには、違うものにしたら?」

大きなお世話だ。
食べたいものを食べてなにが悪い。
私は岡村の提案を無視して、掃除道具を片付け始めた。

「蕎麦が嫌なら、べつのものにすれば。そもそも、一緒のメニューを食べてほしいって、こっちが頼んだ覚えはないし」
「まあ、そうね。分かった。蕎麦でもいいや」
「ん? 『いいや』っていうことは……一緒の店に行くつもり?」
「うん。どのお蕎麦屋さんにするかを選ぶのにも、一人じゃ時間かかっちゃうし」
「あ、そ。まあ、いいけど」
「どこのお蕎麦屋さんにするつもり?」
「時間あるから、吉祥寺まで出ようかと」
「だったら、車で行こう。体力温存しなきゃ」

メビー・ラックの店舗から吉祥寺まで歩いて往復するには、距離にして一駅分なので、大したことはない。
だが、岡村の言う通り、午後以降の予約スケジュールを鑑みれば、体力を残しておくべきだろうとも思った。
なにせ、この後は満室になるほどの犬様が宿泊予定なのだ。
よって、みんなをお散歩に連れて行くだけでも相当な体力を消費するだろうことは、容易に想像がついた。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉