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招かれてみると 中編

さて。
その時々の気分や状況に委ね、招かれてみると、思わぬ出来事に出逢う。

自身の過去を振り返れば。
なにかを行う際、ネガティブな直観がおりてきたのに、”……まあ、気のせいか”と無視した結果は、散々だったりすることが多かった。
直観の招きによって、あらかじめ散々な結果を回避するチャンスがあったのに、みすみす逃したのだから、当然といえるだろう。

逆に、ポジティブな予感に招かれたおかげで、想定していた以上の結果に恵まれたことも多々ある。

両者の実体験が基になって、数日前の夜半過ぎ、帰宅する道を私は変えたのである。
直観によって招かれた道は、帰宅するには遠回りのルートであった。

そのルートの途中では、これまでに何度か、白猫様を見かけることがあった。
周辺に住む誰かにエサをもらっていることは明白で、まるまると太っている。

装着している赤い首輪には、高い音を奏でる鈴がついており、その鈴の音の合図で白猫様が姿を現したことにボクは気づくのだ。

その日も、いつもと同じような場所で、鈴の音が聞こえてきた。
音を辿った先にある塀の上に目をやると、

”よ! ご無沙汰!”

といった具合で、白猫様が鎮座していた。

ボクも、挨拶を真似た。

”よ! ご無沙汰!

すると、白猫様は塀の上から飛び降り、ボクの足元にすり寄ってきた。

”なにしてるの?”
”家に帰るとこ。そっちは?”
”とくに、なにも。暇をもてあそんでるだけ”
”いつも通り、だね”
”いつも通りほど、幸せなことはないしね”
”なるほどね。相変わらず、奥が深いことをいう”
”相変わらず、人間は余計なことまで考えすぎ。疲れないの?”
”うーん……疲れる、かなあ”
”だったら、考えなきゃいいだけ”
”まったく、その通りだ。たまには、頭を休めないといけないよなあ”
”身体もだよ。無駄に動きすぎ”
”あはは……わざわざ無駄に動こうとは思ってないんだけどね。キミたち猫様よりも上手くはないのは確かだけど”

ボクは、自嘲気味に笑みをこぼした。
それについては無関心を貫き、白猫様は歩き出して別れを告げてきた。

”じゃあ、またね”
”どこ行くの?”
”いつも散らかってるあそこのアパートのゴミ置き場がさあ、さっき行ってみたらさあ、きれいに掃除されちゃっててさあ、つまらないからべつの場所に行こうかなと”
”なるほど。やたらと、ヘンな物を食べないようにしなよ”
”さすがに、アレは食べないよ。じゃあね”

白猫様はボクから離れて近くの民家の庭に入って行き、鈴の音の余韻を残しながら姿を消した。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉