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招かれてみると 後編

白猫様がいっていた、

”さすがに、アレは食べないよ”

とは、なんのことだろう……。
気になったボクは、アパートのゴミ置き場に向かった。
そのアパートのゴミ置き場を通り過ぎる際にはいつも、”どうしたら、こんなに散らかっているのを放置できるのかなあ”と見ていたので、場所の察しはついている。

ほどなくして、アパートのゴミ置き場に着いた。
管理会社が見かねて掃除したのだろうか、白猫様がいっていた通り、すっかりときれいになっている。

ただ、一つだけ、ゴミ置き場の中になにかが落ちていた。
目を凝らして近づくと、二つ折りの黒い財布だと分かった。
ゴミとして捨てたのかもしれないと考えたが、そうでなくて落とし物だとしたら、落とし主はさぞ困っているだろうと案じた。

財布には白い招き猫様のキーホルダーがついていて、手に取った拍子に揺れて、小さく高い音が鳴った。
落とし主に繋がる手掛かりがあればと思い、財布の中身を確認する。
すると、少なくはない現金のほかに、健康保険証をはじめとするカード類がたくさん入っていた。

これは落とし物に間違いない、と確信したボクは、すぐさま携帯電話を手にし、警察に連絡を入れた。
状況を告げると、警察官が到着するまでそのまま待っているように頼まれ、それに従った。

20分強待った末、パトカーに乗った二人の警察官が到着した。
ボクは再度、財布を拾った経緯を伝えた。

その後、警察官の一人が、拾得物に関する拾い主の権利について話してきた。
簡単にいうと、一つは、落とし主が三ヶ月経っても現れない場合、拾得物は拾い主のものになる、という権利。
もう一つは、落とし主が見つかった場合で、拾得物の5〜20%のお礼を請求する権利である。
それらの権利請求のための書類に、ボクの氏名・住所・連絡先などを書いてくれ、と警察官はいった。

けれどもボクは、それら二つの権利を放棄する書類にサインした。
落とし主のもとに財布が戻れば、それでよかったからである。

警察官は最後に、落とし主がお礼を伝えたいと申し出た場合に連絡先を教えてもよいか、と尋ねてきた。
見返りを期待したわけではないボクは、それもお断りした。
ボクはただ、白猫様との会話のついでに、ゴミ置き場を訪れたにすぎないからだ。

落とし主がお礼を伝えるのだとしたら、白猫様と招き猫様のキーホルダーにであって、ボクにではない。
落ちていた財布にボクを招いたのは、白猫様と招き猫様のキーホルダーだからだ。

警察官が去った後、ボクの背中の方で鈴の音が鳴った。
振り返ると、ごろんと横になった白猫様がいた。

欠伸をする白猫様を見つめながら、”やっぱり、その時々の気分や状況に委ねて招かれてみるのは、悪くないなあ”とあらためて思った。

〈了〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉