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捨てる人・拾う人 後編

”大丈夫だって。見える位置にいるから”

約束した通り、私は小型犬様の視界から外れないような位置をキープしながら少しずつ離れ、コンビニエンスストアの中を見渡せる場所まで移動しました。
男女二人組の姿は、直ぐに見つけることができました。
コンビニエンスストアのガラス越しに並んだ雑誌売り場で、呆れるくらい呑気に立ち読みをしていたからです。

……は?
小型犬様を寒空に放置したままで?

唖然たる心持ちで、私は立ち尽くしてしまいました。
ふと、コンビニエンスストアの前に設置されていたゴミ箱に、なにやら張り紙がしてあるのに気づきました。
目を凝らして張り紙の文字を確認すると、

”ペットの糞尿を投棄するべからず! 見つけ次第、警察に通報します!”

と書かれていました。

まさか……。
私はゴミ箱の中を覗き込みました。

やっぱり……。
先ほど男女二人組が投棄したゴミ袋の中身は、使用済みのペットシーツと糞尿でした。
鼻を近づけると、ペット様の排泄物の匂いが確かに放たれています。

私は小型犬様を振り返りました。

”これって、キミの家で使っているペットシーツだよね?”

小型犬様は、なんだかそわそわしながら私を見つめ続けています。

”大丈夫だよ。キミはなにも悪くない”

そうこうしているうちに、男女二人組がコンビニエンスストアの中から出てきました。
買い物した形跡は見当たりません。
ただ立ち読みをしに来ただけなら、わざわざ小型犬様を連れて来なくたってよかったものを……。

小型犬様を放置したことによる盗難や逸走事故の心配がゼロではないこと。
身勝手に投棄した糞尿についてのこと。
それらを問い質したかったので、私は彼らに話しかけました。

結果は予想通り。
彼らは私の忠告を無視し、小型犬様のリードを強く引っ張りながら、逃げるように立ち去って行きました。

そんな”嘆かわしい出来事”に、正直、私の心には波風が立ちました。
それでも、古紙拾いをした女子高生による”感嘆した出来事”を思い出すように努め、そのポジティブな要素で波風を包み込みました。
直に、心が落ち着きを取り戻しました。

そうだ。
私はただ、当該女子高生のように、”見て見ぬふり”をして通り過ぎる自分でいたくないだけだ。

それでいいや。
それがいいや。

私はコンビニエンスストアの前に設置されていたゴミ箱の中から、彼らが投棄したゴミ袋を取り出し、家に持ち帰りました。

翌日。
私からその話を聞いたメビー・ラックのスタッフ一同は揃って憤り、そして一人残らず決意をあらたにしていました。
誰かのために、自分も”見て見ぬふり”をしない人間でいよう、と。
むやみに『捨てる人』になるよりも、困っている方のために『拾う人』でありたい、と。

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉