例えば。
野生動物は自分が生きる為に歩いたり走ったりして獲物を探し、狩りをしなければならない。
その『自由』をもしも束縛されたら、死を早める事になるのは必至だ。
しかし、人間に飼われている犬様は狩りをする必要に迫られない。
狩りをしなくても、飼い主様から毎日エサをもらえるからだ。
だからといって、飼い犬様に『自由』は必要ないと思っているわけでは決してない。
終始ケージに入れっぱなしにするとか、リードや鎖でずっと繋ぎっぱなしにする飼育方法には、やはり賛同できない。
ストレスで、何がしかの疾患を誘発するかもしれないからだ。
そんな私の考えとは相反して、世の中には確かに、鎖やリードに繋がれっぱなしの犬様もいる。
これについては地域差にもよるが、いわゆる、外飼いの番犬として飼われている犬様は未だに多い。
メビー・ラックの主な活動地区である武蔵野・三鷹地域でも、そういった犬様を時々見かける。
彼らは往々にして、通りかかる人間を威嚇する為に吠える。
吠える。
吠えまくる。
これについては釈然としない想いをずっと抱えていたので、以前、動物行動学にも明るいベテランドッグトレーナであるK様に疑問をぶつけた事がある。
「番犬として与えられた役割を忠実にこなす彼らには、ストレスはないのでしょうか?」
私の問いに、K様は親身に答えてくれた。
「過度なストレスを抱えるでしょうね。人通りや車の往来の度に吠えるわけですから」
「それはつまり、リラックスしていられる時間が少なくて落ち着きが無くなる、という事ですか?」
「そうです。しつけトレーニングの観点から述べれば、覚えさせたい事柄を犬が行った時には褒めて伸ばすのが良いとボクは思っています。逆に言えば、止めさせたい行動を犬がとった時は無視するのが理想です。理由は、叱る事が逆効果になる場合があるからです」
「犬からしてみれば、飼い主さんにかまってもらったという記憶が残るので、問題行動はより強化されていくという図式ですね」
「そういう前提で考えてみた時、番犬としての役割を覚えさせたいならば、吠えた時には褒めてあげるべきですが……。おそらく、飼い主さんが犬を褒めていたのは、初めの内だけが多いと思われます。色々と忙しいでしょうしね。そうなると、犬は褒めてもらいたくてもっと吠えるようになる。それでも褒めてもらえなくて……という悪循環が生まれるわけです」
「なるほど……」
犬様のお散歩時にも生かせそうな理論だったので、私はもう少し突っ込んで聞いてみた。
「だけど、吠えても褒めてもらえないという嫌な記憶が残るという事は、K様の論理からすると、犬様は吠えなくなるのでは?」
〈続く〉
あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように
富山桃吉