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昨今のペット飼育事情について 〜犬様のお散歩にまつわる事〜20

ふと、私は一つ気になったことがあり、K様に回答を求めた。

「クリッカートレーニングで期待できる効果は理解できました。それにしても……音を聞けば犬様が条件反射で排泄をするようになるということは、逆に、音を聞かないと排泄をしなくなる、もしくは排泄を我慢してしまう可能性があり得るということですか?」
「極限に達すればさすがに排泄をするでしょうが、従順な犬だと我慢してしまう可能性がないとは言い切れません」
「そうなると、たとえばクリッカーを失くしてしまったり、災害が起きて、緊急避難時にクリッカーを持ってこれなかった場合、犬様は我慢の連続にならざるを得ないということですか?」
「クリッカートレーニングを含めて、多くのしつけトレーニング方法は、あくまでも平時の状況下が前提です。災害時は飼い主も犬も、その心理が普通ではないでしょう。そういった想定外の状況下において、しつけトレーニングに責任を問うことは難しいでしょう」

正直、言葉に詰まった。
様々なしつけトレーニングにまつわる理論上のメリット・デメリットについて学ぶにつれ、すべてのペット様に通ずる万全の策がないのは分かっている。
だからこそ、私たちメビー・ラックは未だにしつけトレーニングについての勉強を怠らないし、しつけトレーニングのサービス提供を謳ってはいない。
俄仕込みの知識や経験で犬様に余計なストレスを与えたり、飼い主様を失望させたくはないからだ。

だが、世の中には自分の方法こそがベストだと確信し、いささか盲目的になっているドッグトレーナーもいるのが現実だ。
机上だけの知識や乏しい経験しかないのに、実際に飼い主様の相談やご依頼を承っている業者も知っている。
そのようなトレーナーが共通して口にするのは、自分の方法論が通じないと、飼い主様の飼い方に問題があるとか、犬様の性格に難ありと言い出す始末だから、なおのこと呆れる。

個人的な経験で言えば、迷子ペット様捜索において、しつけトレーニングが役立った例はただの一つもない。
まさに想定外の状況下に直面しているペット様の心理を推し量ればこそ、しつけトレーニングでどうにかできるという発想はうまれてこない。
にもかかわらず、迷子になったペット様の発見・保護も出来ると自負するトレーナーがいる。
まったく、二の句が継げない。

だからといって。
想定外を想定する知恵を振り絞ることから、私は背を向けたくはない。
まだまだ未熟者だからこそ、しつけトレーニングについての学びを続ける意思がある。

「それで良いんですよ。そんな風にペットと向き合う姿勢を崩さないのが、メビー・ラックさんらしい。それが嫌いなら、ボクの知識や経験を余すことなくお伝えすることはしません」

やわらかい表情を浮かべたK様に、私の心の奥はじんわりと温まった。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉