過去ブログ『深く考えさせられる問題 14』の流れをもって、”モンスター飼い主”とチワワ様の飼い主様の間には、しばしの沈黙が張り詰めた。
すると、”モンスター飼い主”が急にしゃがみ込んだ。
そのまま、ダックスフント様を抱きかかえて立ち上がる。
これで、ようやく一件落着か……。
そう安心したが、私の考えは甘かったと、すぐに思い知らされる。
というのも、”モンスター飼い主”はやはり、最後まで分別のある人物ではなかったからである。
具体的にいうと、”モンスター飼い主”は突然、粘りつくような甘ったるい声を出しながら、
「ほうら、もう怖くないよお。大丈夫よお。意地悪なオバサンとバカ犬から、ママがまもってあげるからねえ」
と毒を吐いたのだ。
そうかと思えば、一転して憎悪を浮かべた表情に戻り、飼い主様とチワワ様を睨みつける。
そのままの表情で、ペットカートの3輪バギーにダックスフント様を乗せると、
「意地悪なオバサンとバカ犬って、ほんとに、イヤねえ」
としつこく文句を垂れながら、どかどかと店の外へ去って行った。
最後の最後まで悪態を晒す”モンスター飼い主”の振る舞いに私が呆れていると、チワワ様が小さく吠えた。
そちらに向くと、チワワ様を床に下ろしている飼い主様の姿が目に入った。
とりあえずは、怪我をしなくてよかった……。
私が思っていると、チワワ様の飼い主様は、”モンスター飼い主”の後ろ姿に鋭い眼光を突き刺しながらボソッと吐いた。
「バカ犬に、バカ飼い主め……『※』『※』『※』『※』『※』『※』『※』『※』『※』!」
言葉の終わりの方は不明瞭で上手く聞き取れなかったが、私はなんとなく悍ましさを覚えた。
チワワ様の飼い主様の表情は、”モンスター飼い主”の憎悪を浮かべたそれと類似していたし、まるで、自分の身に起きた不運を呪詛しているように見えたからだ。
一連の言動で非があったのは、確かに”モンスター飼い主”側であったと私も思う。
それにしても、だ。
興奮をコントロールできずに吠え続けてしまう躾を怠っているのは”モンスター飼い主”であって、ダックスフント様に罪はない。
ノーリードで店内に放ったのも、いわずもがな”モンスター飼い主”の行動である。
それなのに、だ。
ダックスフント様にまで呪いの念をぶつけるなんて、いやはや、怒りや恨みの伝播はおそろしい。
その様子だと、チワワ様の飼い主様もいつか、ひょんなことがきっかけで”モンスター飼い主”化してしまうのでは……。
私は一人、憂慮を覚えた。
〈続く〉
あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように
富山桃吉