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運命の出会い 11

子猫様を連れて来院したカップル様と私に、獣医師F先生は丁寧な診察をしながら尋ねました。

「この子、お名前は?」

カップル様は、どこか申し訳なさそうに答えました。

「その……さっき買ったばかりなんで……まだ……」

F先生はにっこりとして、穏やかな声で言いました。

「そうですか。そうですか。まあ、焦らなくても、よく考えてから、自分たちが気に入る名前を付けた方がいいですからねえ」

カップル様はお互いの顔を見合って、小さく笑いながら頷きました。

その傍らで、私はF先生の言葉の意味が気になりました。
『焦らなくても』という言葉に、先天性疾患が疑われる診断結果が伴うのか、それとも伴わないのか……その判別が出来なかったからです。
いずれにしても、F先生に全幅の信頼を寄せる私は、せめて心を落ち着かせようと別のことに考えを巡らせました。

ペット様の名前かあ??
それは確かに大切だと、私も思っています。
名前がないペット様に対しても、もちろん愛着を抱くでしょうし、愛情の深さに差異が生まれるわけではないでしょう。

けれど、よく耳にする名前であろうとも、名前がついているのとそうでないのとでは、ペット様と飼い主様を繋ぐ心の通じ方の深さが変わってくると考えます。
たとえ、よく聞く同じ名前を名付けたとしても、そのせいで心の通じ方に影響が出ることはありません。
名前が同じだとしても、別の命を授かったペット様ですし、その名前を呼ぶ飼い主様の声も、ペット様にとっては世界で唯一の音だからです。

飼い主様が想いを込めて名付けた名前で呼ばれるペット様は、いつか天国に召された後も、その名前を媒体として、飼い主様と心を通じさせることが難しくなくなると信じます。
飼い主様側にとっても同様で、天国に召されたペット様の名前を呼ぶ度に、いつどんなときも、その存在を心に感じられやすくなるでしょう。
結果、ご縁があって結ばれたお互いの繋がりは、永遠に色褪せることのない愛で包み込まれ、あたたかな光にまもられるのです。

私が、名前は大切だと思う理由は、そこに意味を見るからです。
世界に唯一の存在であるペット様と、世界に唯一の存在である飼い主様の絆をより強固に結び、世界に二つとないよろこびを享受する為にも、名前はやはり大切なのです。

そんな私の想いが流れ通じたのか、少し前から小声で話し始めていたカップル様が突然言いました。

「名前、決めました! レアにします!」

カップル様に由来を伺ったところ、レアとは『lea』と綴るらしく、ハワイ語で『よろこび・幸福』といった意味があるそうです。

F先生も私も、良い名前だなあと素直に感心しました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉