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運命の出会い 14

F先生はうーむと唸った後、腕を組みました。

「猫の心臓は小さいので手術が簡単ではない上に、レアちゃんはまだ子猫だしねえ……。ただでさえ心臓を患っているから、手術に耐えられるだけの体力があるか心配というのが正直なところですねえ。万が一のリスクを考えれば、直ちに手術という選択を僕はお勧め出来ません」

もしかしたら、根本的な治療はむずかしいのかもしれない……。
F先生の様子から、私は直感的にそう思いました。

「だからといって、このまま放置するわけにもいかないので、現段階では対処療法をと考えています。薬で心臓の負担を軽くしながら、レアちゃんの体力を保たせるのが望ましいと思いますねえ」

当然ながら、手術には決して安くはない医療費がかかります。
それでも手術を行って成功すれば、レアちゃんが抱えていた心臓病特有の症状は軽減されて、健康な猫様とあまり変わらない生活が送れるかもしれません。
寿命がのびることにも、期待が持てるかもしれません。

ただし。
F先生が仰ったように難しい手術になると思われるので、手術中にレアちゃんが亡くなってしまう危険性もゼロではありません。
そのリスクと手術による体力消耗が故、逆に寿命を縮めることになる可能性も皆無ではないのです。

いずれにしても。
どの選択を決断しようと、レアちゃんがかなしい結果に見舞われてしまえば、カップル様には必ず後悔が残るでしょう。
その恐怖と不安がどうしたって拭いきれずに、飼い主としてどうするべきかの判断が出来ない気持ちは、猫様兄弟と暮らす私にも痛いほど分かりました。

診察室の中は、どんどんと連鎖するネガティブ思考に浸食されていきました。
すると、ネガティブ思考の連鎖をほどくようなやさしい声で、F先生の奥様が仰いました。

「ただね、手術をしなくても、直ちに命を脅かすほどの症状が現れずに、短くはない生涯を全うする猫もいるのよ。ねえ?」

奥様の『ねえ?』に対して、F先生はやわらかい表情を浮かべました。

「確かに、いるねえ。おそらくは、猫自身が病気と付き合いながら生きることに慣れて、意識的に無理をしなくなるのが要因の一つかもしれませんねえ」

F先生と奥様の言葉は、決して慰めの目的だけではないように思えました。
それを生命力というのかもしれませんし、それこそ運命というのかもしれませんが、医学的に言い渡された余命をはるかに超える年数を生きたペット様を、私もたくさん知っているからでした。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉