「このオモチャは本当に大人気商品で〜、入荷しても入荷しても、即日完売しちゃうんですよ〜。うちのお店でも入荷待ちが続いてて〜。だけど〜、お二人はラッキーですよ〜。今さっき、久しぶりに納品されたんで〜、こうやって実物をお見せ出来ますから〜」
そのオモチャは他店でも見かける商品だったので、私には見え透いたセールストークでしたが、カップル様にはそうは聞こえないようでした。
「あの……少しでいいんで、そのオモチャで遊んでいる姿を見せてもらえたりしますか?」
その申し出に、店員は一呼吸おいてから答えました。
「……オッケーです〜。他のお客さんには内緒ですよ〜」
「ありがとうございます!」
店員はオモチャの封を破り、子猫様の目の前で振り始めました。
「ほおら、ほおら〜」
カップル様の膝の上に座っていた子猫様は小さな手を伸ばし、オモチャに向かって戯れつきました。
「ヤバイ! かわいい! かわいい!」
カップル様は、子猫様の様子に歓喜の笑顔を浮かべました。
それはそれで微笑ましい光景ではあったのですが……。
子猫様の抱き方が覚束ないので、落下させてしまわないかと、私はとにかくヒヤヒヤしっぱなしでした。
その心配が考慮されるはずもなく、店員はセールストークを重ねました。
「本当にかわいい子ですよね〜。実際の話〜、この子をご購入検討なさってるお客様は多いので〜、直ぐに決まってしまうと思うんですよ〜」
「ですよね……」
言いながら、カップル様はお互いに目を合わせました。
(どうする? どうする?)
カップル様のアイコンタクトにそんな会話を確信したのでしょう。
店員は続けました。
「この子、このオモチャが大好きなんで〜、お二人がもしこの子と暮らすなら、お家にもあった方が喜びますよ〜、絶対に〜」
ここまでくると、カップル様のご意志はほぼ決まったようで、その決断を店員に伝えました。
「この子とオモチャ、両方ください!」
「本当ですか〜! ありがとうございます〜! 運命の出会いが結ばれて、アタシも嬉しいです〜。では〜、早速ご購入手続きをして頂きたいので〜、一旦、この子をお預かりしますね〜」
抱き上げた子猫様を販売用ケージに戻した店員は、カップル様をカウンターに誘導し、手続きの説明を始めました。
私は販売用ケージに目をやりました。
すると、子猫様はくにゃりと伏せました。
……あれ?
少しはしゃぎすぎたのかな……。
私の足は、自然と販売用ケージに向かいました。
子猫様は私の存在に気づき、こちらを見上げました。
〈続く〉
あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように
富山桃吉