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運命の出会い 9

私の言葉に、カップル様は目を大きく見開き、ぼそっと言いました。

「運命の出会い……」

その一言っきり、しばらくの間、カップル様からのリアクションはありませんでした。
私は辛抱強く待ちました。

人と人の出会いでいえば、良い出会い・悪い出会いを含めて、インスピレーションは確かに大切だと思います。
ですが、それはほとんどの場合において、自分自身だけにベクトルが向いたインスピレーションに過ぎません。
自分に対して、相手も同じ温度感で、同じ強さのインスピレーションを受けていると身勝手に思い込むのは傲慢です。
自己を満足させる目的で、相手に同じようなインスピレーションを押し付けるのは、もってのほかです。

互いのインスピレーションが、出会った瞬間から同程度の温度感と強さを持っていたとしても、月日の流れで変化してしまうこともあるでしょう。
その時を迎える頃には、出会った瞬間のインスピレーションはすっかり影を潜め、先ず、運命の出会いだと愛したはずの相手の文句を並べがちです。
そして最終的に、運命の出会いを信じた自分自身を疑い、呆れるのです。
こんなはずじゃなかった??
と。

上記のようなことは、飼い主様とペット様との出会いにおいても当てはまると考えます。
けれど、確実な違いも存在します。
月日の流れで変化してしまうのは、飼い主様の方だけ、ということです。
そういった一部の飼い主様は、やがて、運命の出会いだと愛したはずのペット様を放置したり、虐待したり、遺棄したり、殺処分したりするのです。

対照的に、ペット様は、運命の出会いを信じた自分自身を疑ったり、呆れたりはしません。
こんなはずじゃなかった??
と、嘆きもしません。
怖い目やひどい目に遭ったとしても、決して、運命の出会いだと信じた飼い主様の文句を並べたりはしません。
自分自身の運命の出会いを、ただただ受け入れるのです。

だからこそ、運命の出会いの行く末は、人間側にかかっています。
だからこそ、運命の出会いであると容易く口にしたペットショップの店員を、私は信用出来ないのです。

やがて、カップル様は口を開きました。

「運命の出会いかどうか……分かりません」
「そうですか」
「さっきこの子猫を買う時にはテンションが上がってて、店員に運命の出会いだなんて言われて舞い上がった自分もいたと思いますが、先天性疾患とかの話を聞いた今は、それよりも不安の方が大きくて……。酷い……ですよね?」
「いいえ。そうは思いません」
「本当ですか!?」
「はい」

私がそう答えたのは、嘘ではありませんでした。
運命の出会いを安っぽく語られるよりも、正直な不安を口にしたカップル様の方が、よっぽど心ある人間に感じられたからです。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉