新着情報

風に揺れるヒマワリの咲く河原で 10

O様の心情を汲んだ岡村は少し考えた後お伝えした。

「もしよろしかったらですけど……」
「なんでしょう?」
「私達がよくお世話になっている獣医師をご紹介差し上げることもできますが……」
「本当ですか!?」
「ええ。動物と飼い主様想いのすごく尊敬できる先生です」
「ぜひ紹介してください!」
「ただ、O様のお宅の近所ではないんです。それでもよろしければですが……」
「車を所有していない私一人でひなちゃんを連れて行けないのは重々承知しています。それを承知で我儘を言わせて頂けるなら御二人に甘えさせてもらいたいです。私と一緒にひなちゃんを連れて行ってもらえるならぜひともお願いしたいです!」
「……わかりました。先生に電話してみますね」

岡村が躊躇した理由はボクも理解できた。
紹介しようとしているF先生は嘘偽りなく尊敬できて信頼できる方だ。
実際に遠方から来院する飼い主さんやペットは少なくない。
皆、それほどまでしてF先生に診てもらいたいのだ。

だからってF先生は決してなんでも治せる神様ではない。
無論、長い獣医師キャリアの中では良いことばかりじゃなかったはずだ。
いくつもの葛藤を抱えてこられた過去もあるだろう。
救ってあげられなかった動物の命や飼い主さんの心に胸を痛め、ご自分の不甲斐なさに涙を流した夜もあったかもしれない。
その全てを五臓六腑で受け止めて今のF先生が在る。
その全てを見てきた眼はどこまでも奥深くてやさしい。
初めてF先生に出逢ってから今もボクにはそう思えてならないのだ。

F先生はいちいち飼い主さんとペットに向き合った治療方針を説明してくれ、選択肢を与えてくれる。
だからこそ、O様の為にもひなちゃんを診てほしい。
O様だってバカじゃない。
ひなちゃんに万が一が起こった際の覚悟まで人に委ねることはない強い人だ。
O様が知りたいことはただただシンプルなことで、ひなちゃんが自力で立ち上がれなくなった理由なのだ。
ちゃんとひなちゃんを診察してくれた上での診断結果を知りたいだけだし、もちろん知る権利もある。
診断結果を包み隠さず伝えてほしいだろうし、ご自分で治療方針の選択をなさりたいに決まっている。
だからこそ!
だからこそボクも、F先生にひなちゃんを診てほしい!

ただやはり気にかかるのが距離だ。
O様のお宅からF先生の動物病院までは車でおよそ30〜40分。
この先、万が一ひなちゃんになにかがあって一刻を争う際には移送時間がかかりすぎる。
ひなちゃんはシニア犬なので移動の負担も気がかりだ。

とはいえ、O様の心情も無視はできない。
岡村も悩んだ末のご提言だったはずだ。
それも分かる。

距離、負担、時間……。
想い、覚悟、選択……。
どうすればいいのか、どうすることがベストなのか……。
ボクはまだ未熟者だから、はっきりと答えを出せずにいた。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉