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風に揺れるヒマワリの咲く河原で 11

少しすると、F先生との電話で席をはずしていた岡村が戻ってきた。
固唾を呑むボク。
きょとんと見上げるひなちゃん。
ソファの上でただじっとしているササちゃん。
期待と不安がごちゃ混ぜになった表情のO様は祈るような仕草で岡村に聞いた。

「……どうでした?」
「F先生に一応の状態と治療経過をお話しました」
「……ひなちゃんのこと診て頂けるでしょうか?」

岡村の話によると、F先生の意見はもっともなことばかりだった。
万が一を想定すればやはり近所の動物病院がベターであること。
できるならば、ひなちゃんが仔犬の時から診ているかかりつけの獣医師が望ましいこと。
シニア犬なので移動の負担が考えられること。
実際に診察をしていない段階で、軽々に具体的なアドバイスはできないとのこと。
とはいえ、今は来院の方が多くて往診に対応できないこと。
それらを聞いてO様の顔が曇ってしまったのを敏感に察知したササちゃんの目つきが鋭くなった。

≪結局そう!≫
≪あのねササちゃん……≫
≪この上なく気分悪い!≫

ササちゃんはスッと立ち上がって伸びをした。

≪あ……待ってササちゃん!≫

焦るボクの想いとかぶるように岡村が言った。

「それでも……」

途端、ササちゃんの動きが止まった。
かと思えば、耳だけ岡村の方へ向けてつぎの言葉を待っている。

「O様がそれでもと仰るなら連れておいでって! シニア犬介護の経験が豊富な岡村さん達が同行するなら大丈夫でしょうって!」
「本当ですか! ありがとうございます。ありがとうございます」

ササちゃんは大きなあくびをしてからもう一度座った。
つられたのか、ひなちゃんも大きなあくびをした。

≪よかったね、ササちゃん。F先生、ひなちゃんのこと診てくれるって≫

ボクの想いが聞こえていないフリをしているが、耳は岡村の方へ向きっぱなしだ。
まったくもう。
どこまでも妹想いのお姉ちゃんだと感心する。
O様と岡村は早速スケジュールの調整をして、F先生に診察して頂く日を決めた。

「診察に行く日は、今までの診察内容や投与の薬、注射の成分をメモ書きしたものをご用意しておいてください」
「わかりました。……それで岡村さん?」
「はい?」
「その日はその……御二人共一緒に同行して頂けるのかしら?」

ひなちゃんがくるりとボクを見上げる。
ササちゃんの耳がサッとボクを捉える。
ボクが口を開く間もなく、岡村は代表権限を発動した眼差しを突き刺してきた。

「もちろん、強制連行致します」

なぬっ!
強制連行かあ……。

まあ。
今回に限っては願ったり叶ったりだけどね。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉