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風に揺れるヒマワリの咲く河原で 12

数日後、ボク達はひなちゃんを連れてF先生の動物病院を訪れた。
無事にひなちゃんの搬送を終えたボク達は、諸々の事情を気遣ってくれたF先生の計らいですぐに診察室に通された。

「こんにちは、F先生」
「はい、こんにちは」

岡村の挨拶に、F先生と看護助手であるF先生の奥様が笑顔で答える。
O様は深々とお辞儀をなさった。

「こんにちは。無理を言って診察をお願いして申し訳ございませんがよろしくお願いします」
「まあ、お座りになって」

F先生の奥様はにこにこしながらO様を椅子に促した。
F先生はひなちゃんを抱えているボクに視線を向けた後、岡村に言った。

「ほお、それが噂の介護用ハーネスですか」
「はい」
「なるほど。複数の用途に使えるようになっているんですねえ。この子の事を考えたなかなかの出来です。関心、関心」

ひなちゃん用に制作した介護用ハーネスにお褒めのお言葉を頂いた岡村は、いっぺんに得意げな表情になった。
なんといっても獣医さんのお言葉だから余計に嬉しいのだろう。
ボクも同じ思いだった。
一生懸命に製作した甲斐があるってものだ。
ボクはゆっくりとひなちゃんを診察台の上に寝かせた。

「それにしてもなかなかの美人ちゃんだ。お母さん、この子のお名前は?」
「ひなちゃんです」
「ひなちゃん、こんにちは。よろしくね。よしよし」

ひなちゃんを見つめるF先生の瞳がどこまでもやさしいので、O様も安心したご様子だ。
診察台の上に寝転がるひなちゃんもすこぶる落ち着いている。

「車中でのひなちゃんを診ている限り、移動のストレス反応はありませんでした」
「それは良かった」

岡村の報告に何度か頷いたF先生はひなちゃんの首筋をやさしく撫でながら、

「それじゃあお母さん、ひなちゃんの事を教えてもらえますか?」

とO様に尋ねた。

「はい。えーっと……」

O様は手提げバック中からメモ書きを取り出し、これまでの診察内容や投与の薬、注射の成分をF先生に告げた。

「なるほど……わかりました。お母さん、詳しく教えて頂いてありがとうございます。さすがひなちゃん想いのお母さんですねえ」
「いえ。岡村さん達のアドバイスのおかげです」
「関心、関心。それじゃあひなちゃん、診察させてね。痛くないから大丈夫だよ。よしよし」
「よろしくお願いします」

O様の顔にわずかな緊張が走った。
F先生はひなちゃんの身体の隅々を丁寧に触診した後、脈拍や呼吸数等を計測し、もう一度ひなちゃんの首筋を撫でた。

「はい、もうおしまい。全然痛くなかったでしょう、ひなちゃん?」

ひなちゃんはF先生の顔を見上げて舌を出している。

「……先生、ひなちゃん、どうでしょうか?」
「そうだねえ……」

切り出したO様と同様、岡村も真剣な眼差しになっている。
ボクはひなちゃんの頭を撫でながらF先生の言葉を待った。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉