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風に揺れるヒマワリの咲く河原で 17

玄関扉を閉めるまでずっとボク達を見上げていたササちゃんの事が気になっていた岡村は、信号待ちの車内で呟いた。

「ササちゃん、どうしたのかな……」

返答に窮していたボクに岡村が畳み掛ける。

「ねえ? なにか言ってたんじゃないのササちゃん」
「……なにかって?」
「なにかよ」
「うーん……」
「言えない事?」
「言えない事っていうか……言ってたかどうかっていうとその……」
「はっきりしてよ」

そう言われても正直困った。
そもそも、はっきりと会話ができているかの証拠を示せと言われてもできないからだ。
それはササちゃんに限った事ではない。
他の動物達と接する時においても同じだ。
ボクの場合はいつもなんとなくそんな気がしたというレベルの話で、俗に言うアニマルコミュニケーションのようなものとは違うのだと思う。
そういったもので救われた方もいらっしゃるだろうし、自分にそういうチカラがないからといって否定をするつもりはないが、そんなチカラが本当にボクにもあるのなら、迷子ペット捜索の発見・保護率は100%を維持できているだろう。
だが現実は違う。
飼い主様を含め、地道な捜索活動が実を結んでようやく発見・保護にいたる。
経験上、歩く距離と聞き込みの数に比例して発見・保護率が高まるという自負がある。
それども確かに不思議な出来事を経験する事もある。
いずれにしても科学的考察の余地が充分に残されているので、今はまだ、誰にもその事についての明言を避けていた。
そんなこんなで、岡村の問いかけにもはっきりとは答えられない心境だった。

「……まあその……なんとなくそんな気がしたっていうだけなんだけど……」
「なに? なに?」

岡村は車を路肩に寄せて真剣な顔を向けてきた。

「いや、実は昨日の夜さ……」

ボクは前夜、たまっていた事務処理に追われて遅い時間まで店に残っていた。
他のスタッフは既に帰宅の途についていた。
一人で机に向かっている最中、ふと店の入り口に誰かの気配を感じた。
間もなくして人感センサーが反応し、店内のチャイムが鳴った。
こんな時間に誰だろう……。
緊急ご依頼の飼い主様かと思い、急いで店の扉を開けた。

けれど??

そこには誰の姿もなかった。
階段を降りて行く靴音もしない。
店はビルの最上階に位置し、店内扉前を下った踊り場には逸走防止の柵に店名入りの張り紙がしてあるので、階下の誰かが誤って上ってくる事も考えにくかった。
というか、そもそも階下のテナントには夜分に人の出入りはない。
不思議に思いながら踊り場まで下りた時、ボクは思わず声を漏らした。

「あ……」

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉