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風に揺れるヒマワリの咲く河原で 18

一瞬見えた黒色のフサフサと匂い。
間違いない!
確実に知っている!
紛れもなくひなちゃんの尻尾だ!
店内に戻り、岡村に電話をかけた。

「お疲れ様です。どうしたの?」
「お疲れ様です。あのさ、電話かメールでO様から連絡あった?」
「え? 電話はないけど、メール確認してみる」

岡村の返事を待つ間、ボクは顧客リストをめくり、登録用のひなちゃんの写真を見た。
河原散歩の休憩中に撮った1枚には、今とは違ってまだ艶のいい毛並みが風に揺れている。
こうやってみるとやはり随分と痩せてしまった。

「メールも来てないけど……O様、どうかした?」
「……いや。なんとなく気になっちゃって。O様、体調がすぐれなかったから」
「そうだよね。心配だよね。なにか連絡あったらそっちにもすぐ知らせる」
「わかった。じゃあ」

ボクは結局、さっきの不思議な出来事を岡村には告げずに電話を切った。
そのまま、先日のひなちゃんとの会話を思い出す。

≪ねえ? 河原のヒマワリ咲いた?≫
≪残念だけど、まだ咲いてないよ≫
≪やっぱりね。そっかあ……≫

この≪やっぱりね≫と言ったひなちゃんの言葉には、実際に河原のヒマワリがまだ咲いていないという返答内容の他にも意味があったのかもしれない。
身体は自由に動かなくとも、もしもひなちゃんの意識だけは自由に動けるのだとしたら、河原にヒマワリが咲いたのかを既に自分で確認しに行っていたのかもしれない。
けれどもひなちゃん自身、その事が現実かどうかの判断がつかないので、あえてボクを使って確認したとも考えられる。
だからこその≪やっぱりね≫だとしたら……。

ボクはインターネットを開いて、そういった現象について調べ始めた。
眉唾ものの記事が多い中、似たような現象について書かれているものもあった。
どの記事も真意まではわかるはずもないし、すべてを鵜呑みにするわけではないが、ボクは妙な胸騒ぎを覚えた。
ひょっとして、ひなちゃんはもう長くないのでは??
いや!
いやだ!
縁起でもない考えを振り払ってその日のボクは帰宅の途についたが、今日伺った際の玄関先でのササちゃんの行動がまたボクの心をかき乱す。
なぜって、ひなちゃんもササちゃんも、ボクに同じ言葉を贈ってくれていた気がするからだ。
ありがとうって??

そこまで話す間ずっと黙って聞いていた岡村が言った。

「……そっか。さあてと、今晩はひなちゃんとO様に何を作ってあげようかね。ってその前に! 迷子の猫ちゃんを無事に発見・保護できるように頑張らなくっちゃね!」

岡村は再び車を走らせた。
ボクは流れる景色を眺めていた。 
しばらく走った先で、岡村が再び声を発した。

「あっ! 花屋さんだ!」

店先に並んだ沢山の花の中にヒマワリを見つけた。
それはそれは眩しく咲き誇っていた。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉