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風に揺れるヒマワリの咲く河原で 2

「炎症性ヘルニアですね。コブの炎症を抑えるステロイドを注射しときます」

往診にやってきた女性獣医師はきびきびとした手つきでひなちゃんに注射を打った。

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唸り、うな垂れるひなちゃんを気にかけながらO様は訊ねた。

「ひなちゃん……もう立ち上がれないのでしょうか?」
「とりあえず経過観察ですね。ですが前向きに考えて下さい。経験上、八回の注射を打ってすっかり歩けるようになった例は少なくありません」
「よかったね、ひなちゃん。がんばろうね」
「では、次回は6月1日の同じ時間に伺いますので」
「よろしくお願いします」

女性獣医師の言葉に勇気をもらったO様だったが、突然立ち上がれなくなったひなちゃんのお世話の大変さを痛感するようになったのは、6月1日の往診が終わった夜だった。
低反発マットに横たわりっぱなしのひなちゃんの排泄掃除やお世話がたたったのか、激しい腰痛に悩まされたのだ。
O様はこれまでも数頭の犬を飼った経験があるが、大型犬はひなちゃんが初めての経験で、加えて今までの犬達は寝たきりの介護を要さずに旅立ったらしい。
もしもこのまま自身が腰痛を悪化させて動けなくなったら、ひなちゃんは排泄物まみれになってしまう……。
ただでさえ立ち上がれなくなってしまった上に、そんなかわいそうなことは避けてあげたい。
『誰か』にひなちゃんのお世話を手伝ってもらわなくちゃ!
あれやこれやとペットシッター関係を探しては問い合わせを繰り返したが、ひなちゃんを任せられる『誰か』は、なかなか見つからない。
そうこうしている内に、ここならどうかとある人から紹介を受けた。
このような経緯があり、O様は弊社メビー・ラックにご依頼をなされたのだった。

「ひなちゃんのこと、お引き受け頂けますか?」
「もちろんです。実は私共メビー・ラックは『ライク』という飼い主さんに遺棄されたシニア犬を保護していまして。保護した時には既に治らない病気を患っていたもので、今もまさに介護生活真っ只中なのです。他にも幾頭ものシニア犬の介護経験がございますので、ひなちゃんとO様のお力になれればと存じます」

岡村の言葉に安堵を覚えたO様は、目に涙をうっすらと浮かべておられた。
ボクはひなちゃんにあらためて挨拶をした。

「ひなちゃん、これからよろしくね。ひなちゃんが大好きなO様の為にも、ボクに出来る事はなんでもしてあげるから。ひなちゃんは、自分のせいでO様が大変だなんて思わなくて大丈夫だからね」
「ウオンッ!」

確かな力で返事をしてくれたひなちゃんからの愛情を感じたのだろう、O様の瞼に浮かんだ涙がつうと流れた。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉