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風に揺れるヒマワリの咲く河原で 3

「ではO様、早速ひなちゃんに適したお世話スケジュールを立てましょう!」

華奢な身体つきのわりに、こういう時の岡村は頼もしい。
ボクから見ても、贔屓目なしに根っからの動物好きだと太鼓判を押せる。
特に『ライク』と出逢ってからというもの、すっかりシニア犬のお世話マニアであると、スタッフの中でひそかに呼ばれている。

岡村とO様がスケジュール計画を練っている間も、ボクはひなちゃんとのコミュニケーションを慎重に取り続けていた。
たとえ友好的態度を示してくれてるとはいえ、ボクとひなちゃんは今日初めて出逢った仲だ。
いくら人懐っこい性格であっても、自己都合でムリに距離を詰めて、ひなちゃんに余計なストレスを与えてはかわいそうである。
人間と同じ、動物とも対等な関係を築くのがボクのモットーだ。
だから初めての動物と接する時はいつも、出来得る限りヒアリングとコミュニケーションには時間をかけるし、動物の音なき声に耳を傾けることを怠らない。
人間とは違い、彼ら動物はウソはつかないから。

「なるほど。ひなちゃん、河原での散歩が好きなんですね」

にこにこしながら岡村が言うと、O様の顔に影が差した。

「ただ、立ち上がれなくなってからは散歩に連れて行ってあげられてないんです……」
「でしたら、次回6月3日のお世話に伺う日には、早速ひなちゃんを散歩に連れて行ってあげましょうよ。ずっとマットに横になったきりじゃ、ひなちゃんもストレスが溜まってるでしょうし」
「ありがたいですけど……寝たきりのひなちゃんをどうやって散歩に連れ出すのでしょうか?」
「任せてください! 彼に!」

自分じゃないのかーい!
と、心でツッコミを入れてひっくり返るボクを、ひなちゃんがくるり、きょとん。

≪かわいいな、こんにゃろー!≫
≪そう?≫
≪うん!≫

ボクは二つ返事で了承した。

「任せてください。ひなちゃんが喜んでくれるならボクも嬉しいですし」

となると、ひなちゃんの身体のサイズに適した介護用ハーネスが必要になってくる。
まさかおんぶして連れて歩くわけにはいかない。
滑稽な上に、動物関係のプロとしてどうしようもないくらい失格だ。
やむを得ない。
明後日6月3日までに完成させるには……今晩から気合で製作だ。
可能ならば、本日中にひなちゃんの身体のサイズを測らなければならない。
はてして、ひなちゃんはボクが触れることをゆるしてくれるだろうか……。
どのケースでも理想は動物の方からボクに心をゆるして近寄ってきてくれることなのだが、ひなちゃんは今、あいにく立ち上がれない。
ボクはひなちゃんとのコミュニケーションが充分と判断されるタイミングを見計らっていた。

すると……。

ボクの背中に鋭いモノが刺さった。
くっ……こ、これは……なんでこのタイミングで……。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉