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風に揺れるヒマワリの咲く河原で 5

ボクはひなちゃんからあえて視線をずらした。
じっと目を見つめ続けて、ひなちゃんが警戒してしまうのを防ぐ為だ。

「O様、ひなちゃんと良好なコミュニケーションを図りたいので、好物のおやつを少し分けて頂けますか」
「はい。少々お待ちを」

言いながら用意してくれたのは、サツマイモにチーズが巻かれたおやつが入ったパウチ袋だった。

「ひなちゃん、これが大好物なんです」

0様は意図せずパウチ袋を振った。
その音を聞いた瞬間、ひなちゃんがくるりとO様を見上げた。
続けざま、おやつを受け取ったボクにくるり。
効果抜群の予感通り、キラキラさせた瞳でボクを……いや、おやつを見つめている。

「ほら、ひなちゃん。大好物のおやつだよ。はい、どうぞ」

ボクはひなちゃんと同じ目の高さに身をかがめ、パウチ袋から取り出したおやつを一つ、ひなちゃんの顔の傍へピタリと転がした。
我ながらナイス、アプローチ!

すかさず、ひなちゃんは転がってきたおやつをぺろりんとたいらげた。
ナイス、ぺろりん!

間髪入れず、催促するようにキラキラ瞳でボクを見る。
ナイス、キラキラ!

「おいしい?」

ボクの問いかけに、ひなちゃんは嬉しそうに舌を出して答えてくれた。

「そっか。じゃあ、もう一つね。はい、どうぞ」

ぺろりん、キラキラ。

「はい、もう一つ。どうぞ」

ぺろりん、キラキラ。

「はい、どうぞ」

それを数回繰り返し、ひなちゃんの尻尾の方から徐々に距離を縮めていく。
イモムシみたいにモゾモゾ近寄っていくボクを見て、O様はぽかーんとなさっている。
それをちらりと見た岡村はくすり。
ボクはただただ真剣にモゾモゾ、モゾモゾ。
ひなちゃんは引き続きキラキラ、キラキラ。

ぽかーん、くすり、モゾモゾ、キラキラ。
ぽかーん、くすり、モゾモゾ、キラキラ……。
……ぽか、くす、モゾ、キラ……。
ぽ、く、モ、キ。
ぽ、く、モ、キ……。

省略したオノマトペを呪文のように頭の中で繰り返しながら、少しずつ少しずつひなちゃんに近寄っていくボク。
とうとうお腹の横まできた。
今度は手から直接おやつをあげてみる。
視線をずらしたまま、先ずはおやつを握った手の甲をひなちゃんにゆっくりと差し出す。

クンクンクン。
クンクンクン。

よし!
興味を示してくれている。
スローモーションで手のひら側に向きを返して、握った指を慎重にほどいていく。

クンクンクン。
クンクンクン。

おやつの匂いにつられたひなちゃんは鼻先でボクの指をこじ開けて……ぺろりん、キラキラ。
いい感じだ!
それでも慎重を重ね、同じことを数回繰り返した後にもう一つおやつを握ったボクは、いよいよひなちゃんの身体に触れてみようと決断した。

――その時!

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉