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飼い猫様の窃盗 101

思いにふける私を現実に戻したのは、エサやりの女性からの電話でした。

「もしもし。どうでしたか?」

無事を確認した私の言葉に答える間もなく、エサやりの女性が感心したようにいいました。

「あんた、本当に勘が働くねえ」
「なんです?」
「あんたが心配していた通りだったよ。公園の脇の路上にバンが停まってた」
「やはり、停まっていましたか……。ということはまだ、私を捜し回っている可能性が高いですね……。それはそうと、男たちから不必要に接触されませんでしたか?」
「それは大丈夫。連中に、こっちの存在がバレないように観察したから。あんたにいわれた通り、バンには近づいてないしねえ。それに、バンから見えない位置に移動してから電話をかけてるし」
「ご無事なら、なによりです」
「それにしても、困った状況だねえ。せっかく、猫を保護できたっていうのに……」
「バンのほかに、歩いている不審な男たちは見かけませんでしたか?」
「……見てないねえ」

とはいえ、男たち全員がバンの中にいて、私が現れるのを指をくわえて待っているとは考えられません。
あらゆる手段を講じ、手分けして、私を捜し回っているはずです。
とすると、この庭を出て、迂闊に歩き回るのは考えものです。

最善の策を考えあぐねていると、焦れたような声で、エサやりの女性が聞いてきました。

「……どうするべきかねえ」
「うーん……」
「一旦、そっちに戻って、一緒に考えようか?」
「いや。お気遣いはありがたいのですが、そのままご自宅に戻ってください」
「……どうするかを決めたのかい?」
「はい」
「聞かせてごらんよ」
「一先ず、家主様が起きる時間まで、このまま待機することにします」
「それで?」
「家主様と話ができる段になりましたら、しばしの時間、玄関内に捕獲器ごと置いて頂けるようにお願いをします」
「それで?」
「捕獲器を置かせて頂いている間に、入院なさっている飼い主様の元へ急いで向かい、ご自宅の鍵を預かってきます。捕獲器の移動は、それからにします」

S君が入ったままの捕獲器を放置することは、万が一を考えると、やはり心配でした。
とにもかくにも、リスクは最小限に抑えるに越したことはありません。
エサやりの女性も、そのことに同じ考えを示し、

「そうだねえ……連中がウロウロしている間に無理して猫を運ぶよりも、その方がまだ安全かもねえ。まあけど、どうしても困った状況になったら、いつでも連絡くれていいからねえ」

と仰ってくれました。

私はあらためてエサやりの女性に御礼を告げて、電話を切りました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉