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飼い猫様の窃盗 102

私を捜し回っている男たちから見つからないようにするには、建物の裏手であるこの場所で待機し続けるのが良い選択だと判断した私は、S君が入ったままの捕獲器から程よい位置にしゃがみ込みました。

本音は、地べたに足を投げ出して座りたい気持ちでした。
ですが、そうすればもう一度立ち上がる気力が奪われると思い、止めたのです。
眠気に襲われるのも、避けたいところでした。
とにかく、S君を飼い主様のお宅に届けるまでは、集中し続けなければなりません。

集中力を維持するために、何かするべきことはないか、私は考えました。
とりあえず、スマフォを開いて時間を確認すると、夜明けまではあと二時間ちょっとでした。

”無事に家に帰れるまで、お互い頑張ろうね!”

S君と自分自身を励ましてから、私はメールの文章作りに励みました。
送信しようと思った相手は、S君の飼い主様です。
この時間帯故、電話をかけるのは憚られるので、とりあえずは、S君の無事確保の報告をしようと考えたわけです。

できれば、S君の状態を撮影し、その写真をメールに貼付した方がよろこびも一入でしょう。
ですが、写真撮影時のフラッシュで、男たちに気づかれてしまう可能性がゼロとはいいきれません。
よって、一先ずは、文章だけを送ることにしました。

”飼い主様に、S君の無事を報告しとくからね”

目を閉じてじっとしていたS君でしたが、私の言葉を聞くと、ちらりとこちらを見上げました。
私は頷き、出来上がった文章を送信しました。

それから間もなくのことでした。
突然の不運に見舞われ、私は動揺してしまいました。
雨粒が落ちてきたのです。

天気予報では、雨が降るなんていってなかったのにな……。

そう愚痴をこぼしても、雨が止むわけではありません。
私はとりあえず、着ていた上着を脱ぎ、Tシャツ姿になりました。
少しでもS君が雨に濡れないよう、捕獲器に上着をかけるためです。

”雨、早く止めばいいのにね……”

しかし、無念にも、S君と私の願いは天に届きませんでした。
止むどころか、雨は次第に強まっていったのです。
S君が入っている捕獲器の地面も、徐々に湿り気を帯びてきました。
このままでは、S君が濡れてしまうのも時間の問題です。

……どうにかしなければ!

私は周囲を見渡しました。
なにか、雨避けになるものが欲しかったからです。
けれども、今いる家主様の敷地内に、余計な物は一切置いてありません。
おそらくはきれい好きな性格で、物はすべて物置の中に閉まってあると思われます。

困ったぞ……。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉