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飼い猫様の窃盗 103

適当な雨避けが見つからないからといって、S君が入った捕獲器を移動するべきかどうか……。
私は悩みました。

この家主様の建物の構造上、屋根で雨避けができそうな場所は限られています。
一つは、玄関ポーチです。
しかしながら、玄関ポーチは、目の前に伸びる道路からの視界を遮るのに適していません。
万が一、私を捜し回っている男たちが目の前の道路を通ったら、私を発見するのに苦労はしないでしょう。

ならば、捕獲器だけを玄関ポーチに移動するか……それもまた、リスキーであるといえます。
私の姿よりも高さがないとはいえ、捕獲器が玄関ポーチに置いてあれば、やはり違和感があります。
なにかの拍子でS君が鳴けば、鳴き声を辿って捕獲器を発見される危険性があります。

屋根で雨避けができそうなもう一つの場所は、家主様の車が停まっている駐車スペースです。
こちらも当然、目の前の道路に面しているのですが、車の後ろにしゃがみ込んでしまえば、身を隠すことは可能です。
S君の鳴き声が聞こえてしまう欠点は、玄関ポーチと大差はありませんが……それでも、私の身を隠せるだけマシかもしれないと考えました。

ほかの方法があるとすれば、エサやりの女性かエサやリ男性に連絡をして、雨避けになるなにかを持ってきてもらうお願いをすることでした。
ただ、せっかく無事に帰宅してもらったのに、再び呼び出して、私を捜し回っている男たちに見つかってしまうリスクを負わせる気にはなれません。
やはり、自力で対処するべきだと思いました。

そうと決まれば、即実行です。
私は捕獲器を、建物の裏手から駐車スペースに移動しました。
あとは、男たちが目の前の道路を通らないことを祈るのみです。

捕獲器にかけていた上着をめくって確認したところ、幸いにして、S君の身体はさほど濡れていないようでした。
もうすぐ再会できるというのに、S君に風邪をひかせたら、飼い主様を心配させてしまうので、とりあえずはほっとしました。

”頑張ろう! あと少し! 頑張ろう! あと少し!”

時折、S君にそう語り掛けながら、私は朝を待ちました。
雨が落ちる音に耳を傾けてじっとしていると、時間の流れが遅く感じられました。
それでも、緊急事態が起きるよりはよっぽど良いのですが……なにせ、少しでも気を抜くと集中力が落ちてしまいそうなので、私は気を張り続けました。

そうこうしながら、一時間ばかりが経過した頃です。
目の前の道路を歩いてくる誰かの気配を察知して、私は身構えました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉