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飼い猫様の窃盗 105

捕獲器の中にあるちいさいカップに水を注ぐには、フラップを開けて、手を中に入れた方が確実です。
しかしながら、それは同時に、S君が飛び出してしまう危険もはらみます。
ですので、あらかじめ、私はS君に告げました。

”上から水を垂らすから、水が少しはねちゃうかもしれないけど、ごめんね”

捕獲器の外から指を伸ばし、ひっくり返っているちいさいカップを直してから、私はペットボトルのキャップを開け、水を注ぎました。
S君は垂れてくる水を確認すると、近づき、カップに溜まった水を飲みました。

S君が水を飲み終えると、その後はしばらく、何事もない時間が流れました。
雨は相変わらず、止みそうにありません。
ですが、それを不都合に捉えず、ポジティブに考えることにしました。
雨が降っているおかげで、歩行者の数が少ないことは、S君に余計なストレスを与えずにすむからです。

捕獲器を用いて猫様を保護した場合、ほとんどは、すぐに飼い主様に引き渡すことになります。
そういった意味では、今回はレアケースといえますが、それすらもポジティブに捉え、朝を待っている間、私はS君との会話をたのしむことにしました。

”どうして、迷子になっちゃったの?”
”迷子になってしまう前は、普段、どのように暮らしていたの?”
”どんな遊びが好きなの?”
”好きなエサは?”
”苦手なことは?”
”どんなご縁で、飼い主様と出逢ったの?”

それらの質問に、S君は快く答えてくれました。
まさに、自然と会話が弾むといった具合です。
おかげで、時間の流れを遅く感じずにすみました。

会話の中でも、とくに興味深かったのは、迷子中の暮らしについてでした。

・どこで、どのようにして、エサや水を手に入れていたのか
・エサや水を調達する場所は、一か所なのか複数個所なのか
・どこで、どのようにして、寝床を確保したのか
・寝床は、一か所なのか複数個所なのか
・活動時間帯は、どういったものだったのか
・地域に暮らす野良猫様たちとの関係性は、どういったものだったのか
・仲が良くなった野良猫様は、誰だったのか
・反りが合わない野良猫様は、誰だったのか
・意地の悪い人間いよって、怖い目や危険な目に遭わなかったのか
・普段は室内で暮らしているわけだけれども、外に出てみて、なにを思ったのか
・外で過ごした実体験を経た今、飼い主様との室内暮らしに戻ることを、どう思っているのか

上記を含めた様々な質問に対して、S君は率直な想いを聞かせてくれました。
その想いのすべてを知ったおかげで、私はあらたな気づきを得ることができました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉