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飼い猫様の窃盗 11

「カーナビの地図からすると、ここから歩いて行くなら10分位の距離だろう」

私は、大柄な男に軽くお辞儀をして御礼を述べました。

「そうですか。ありがとうございます」

その後、大柄の男は、粗方の道順を口頭で私に説明してきました。
カーナビを見るついでにバンの車内を覗こうと思っていたのですが、失敗です。

そうこうしている内に、やせ細った男が、フレンドリーな作り笑顔で私に告げてきました。

「じゃあ、”暗い夜道”ですから気をつけて」
「どうも……」

わざわざ”暗い夜道”を強調されたので、嫌でも身を引き締め直した私は、つぎの話題を男たちに投げかけようとしました。

すると、その時です。
男たちが出入りしていた公園の方に、私は気配を感じました。
振り返ると、そこには一匹の猫様がいて、足早に歩いていました。

「あっ……」

私が短く発したものの、その猫様は構わずに歩き続けています。
目を凝らして確認すると、その猫様はキジトラ柄で、残念ながら私が捜索している猫様とはべつの猫様でした。

だからといって、気を抜けません。
この男たちが仕掛けた捕獲器が公園内にまだ残っているとしたら、キジトラ猫様は捕らわれの身になってしまう危険性があるからです。

その可能性を思った矢先、はっと気づきました。
この男たちがこの場を即刻離れられない理由は、そこにあるのではないかと思ったからです。
捕獲器が公園内にまだ残っている可能性の裏付けとして見当外れとはいえないですし、自分たちよりも先に、この場から私を追い払いたい理由としても合点がいきます。

そんなふうに一人で納得していると、やせ細った男が気にして、私に尋ねてきました。

「どうしました?」

私は猫様の行き先を知りたかったので、すぐに返事をせず、視線はそのままにしていました。
したらば、猫様は公園の生垣に潜り込もうとして、身を縮めました。

「……どうしました?」

もう一度尋ねてきたやせ細った男は、私の視線の先を確認するべく、私の前方に歩み出てきました。
ですが、その時にはすでにキジトラ猫様の全身は生垣の中に隠れて、その姿を見ることはかないません。

「なにを見ているのですか?」

やせ細った男が抱く訝しさをいたずらに刺激することを避けるため、私はうそぶいてみせました。

「何も見てませんよ。ちょっと思い出したことがあったもので」
「ん?」
「いや、そういえばですね……」

いいながら、私は斜め掛けにしていたバッグに手を突っ込み、ガサガサと動かしました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉