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飼い猫様の窃盗 110

気になることとは、ロータリに停車している車についてでした。
以前に見かけた、私を捜し回っている男たちが乗車していたバンとは違う車種で、スモークフィルムで窓が覆われた黒いワゴン車です。
ワイパーが作動していることから、ワゴン車のエンジンがかかっているのが分かります。

ただ単に、家族か知人などを駅まで送りに来た、もしくは迎えに来た可能性はもちろんあります。
なのに、男たちに捜されている私自身の状況が影響して、過剰に気に留めているだけかもしれません。

それにしても、です。
スモークフィルムのせいで車内にいる人物の動きが窺い知れないことが、不安をかきたてました。

よって私は、駅の屋根の下に入るぎりぎりまで、傘で顔を隠したままにしました。
屋根の下に入って傘を閉じると、すかさず、頭に巻いていたタオルの結び目をほどきました。
そして、顔を隠すようにそのタオルを垂らしながら、改札に続く階段を上りました。

階段をそのまま数段上がってから、階下を振り向いて様子を確認すると、ロータリーに停車していたワゴン車はもう、私の視界から消えていました。
どこかに走り去ったのだと思われます。
それについて、若干の違和感を抱きました。
なぜならば、この短い間に、階上から人が降りてきたわけではないからです。

けれども、ワゴン車に乗車していた人物の待ち人が、電車でやってくるとは限りません。
駅前ロータリーに、徒歩や自転車などのほかの手段でやってくることも充分に考えられます。
私は後悔しました。
極力顔を見せないようにしながら移動していたとは故、せめて、ワゴン車のナンバープレートを確認しておけば良かったと思ったからです。

けどまあ、今さらか……。

ワゴン車が走り去った今となっては後の祭りなので、私は再び階段を上り、改札をくぐりました。
立ち止まらずにホームまで歩くと、そこには、始発待ちをしている複数の人間がいました。
この中に、私を捜し回っている男たちの仲間がいるかもしれないわけですが、ぱっと見では、怪しい人物はいないようでした。

少しして、間もなくホームに電車が滑り込んでくる旨を告げるアナウンスが鳴り渡りました。
ベンチに座っていた何人かが、立ち上がりました。
私は念のため、自分以外の人間が並んでいないドアを選んで電車に乗り込み、車内を見渡せる位置の座席に腰を下ろしました。

その後しばらくして、電車のドアが閉まり始めました。
そこまで待ってようやく、頭から垂らしていたタオルを取ろうと、手を頭に持っていきました。

その時、閉まり始めたはずの電車のドアが、再度開きました。
続けて、駆け込み乗車に注意を促すアナウンスが車内に流れました。
どうやら、発車ぎりぎりを待って電車に乗り込んだ何者かがいるようです。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉