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飼い猫様の窃盗 126

「それでは……この後、どうしましょう? そろそろ、病院に戻らなければいけない時間ですよね?」
「残念ながら、その通りです」

S君がくつろいでいるであろう寝室を横目で見たS君の飼い主様は、名残惜しそうな表情になりました。
その気持ちに理解を示した私は、S君の飼い主様にいいました。

「病院まで送りますよ」
「ご親切にどうも」
「今夜分のS君のフードと水は、用意してありますか?」
「はい。念のため、多めに用意しておきました。トイレの設置も終えています」
「それでは、電気のブレーカーやガスの元栓、戸締りのチェックをしたら、S君が心配しないように、出掛ける旨を伝えてあげてください。時間は、お気の済むまでどうぞ」
「お気遣いありがとうございます」
「いえいえ。私は車でお待ちしておりますので」
「分かりました。これ、お借りした車の鍵です」

受け取った私は車に戻り、メビー・ラック代表の岡村に電話をかけました。
そして、S君やS君の飼い主様の現況を伝え、『ペットシッター』サービスのご依頼の件についても話しました。

すると岡村は、

「分かった。私が行けるようにする」

と了承し、早速、スタッフのスケジュール調整に取り掛かったようでした。
パソコンのキーボードを叩く音がした後、確認するように岡村が聞いてきました。

「ヒアリングは、どうする?」
「S君のことは、捜索に取り掛かる際に充分なヒアリングをしているから、あとで店に戻った時に申し送りする」
「よろしく。それで、実際のお世話時のことだけど、鍵はお預りする方向?」
「そう」
「あとは、フードの置き場所とかを知っておかないとだけど……」

通常、『ペットシッター』サービスのヒアリング時には飼い主様が同席しているので、すべてを同席しながら確認できますが、S君の飼い主様は今から病院に戻らなければならないので、そうはいきません。
S君の飼い主様と顔を合わせたことのない岡村が懸念を抱くのは、もっともです。
であるからして、私の考えを伝えました。

「フードの置き場所も含めて、ぜんぶ確認してから出発するからご心配なく」
「じゃあ、出発時に、もう一度連絡して。そっちが到着する頃には、私も病院に着くようにする。S君の飼い主様に、ご挨拶しておきたいから」
「分かった。だったら、ついでに、病院で申し送りも済ませよう」
「そうね。必要書類、忘れずに持っていくわ」

電話を切った私は再び車を降り、S君の飼い主様宅の玄関前に立ちました。
続けてインターフォンを押そうと手を伸ばしたタイミングで、S君の飼い主様が玄関ドアを開けて出てきました。

「お言葉に甘えて、お待たせしちゃいました。もう出れます」
「その前に」
「はい?」

岡村との電話内容を、私は伝えました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉