病院へ向かう道すがらに、私を捜し回っている男たちの影はありませんでした。
道中、S君の飼い主様は、男たちについてもっと聞きたがりました。
私は話すことにしました。
S君の捜索は終了しているので、S君の飼い主様が夜中に公園をうろつくことは、もうなさそうだからです。
私の話を聞いたS君の飼い主様は、心底、驚かれ、言葉に詰まっていました。
と同時に、S君を無事に保護できたことに再びの安堵を覚えた様子で、感謝の言葉を口にしました。
「そんな男たちがいたのにもかかわらず、Sを無事に保護してくださって、本当に、本当に、ありがとうございました」
「御礼はもう充分にいってもらいましたよ。ああしてS君のくつろぐ姿を見れたのは、私としてもうれしい限りですし」
今回の捜索については、私を捜し回っている男たちの存在が厄介だったのに間違いはありません。
S君を無事に保護できたことは、紛れもなく、たくさんの協力者たちのおかげです。
彼らの力を頼らずにもしも一人で捜索をしていたなら……きっと、S君の無事保護という結果は変わっていたと思います。
そのことを切に感じれば感じるほど、私には気になって仕方がないことがあります。
『飼い猫様の窃盗 120』から『飼い猫様の窃盗 124』の冒頭まで綴ったブログに登場した、B君とB君の飼い主様のことです。
私が目撃した白黒ブチ柄の猫様が、間違いなくB君だったとして、です。
その目撃地点周辺で、B君の飼い主様がB君を発見できたどうか、現状では分かりません。
もちろん、すでにB君を発見できて、尚且つ保護までできていれば、それに越したことはありませんが……。
仮に、保護どころか目撃することもできなかった場合、B君の飼い主様のメンタルが心配でした。
B君の姿を現認することだけに躍起になって、いつまでも現場に居続けてしまい、つぎに行うべく適切な捜索行動に移れていないのではないだろうか……。
迷子ペット様捜索のプロである私であっても、目撃情報地点での現認にどの程度の時間を割いて、どのタイミングでつぎの捜索行動に移るかの見極めは、正直、難しいものです。
B君の飼い主様は迷子ペット様捜索をしたことがなくても、それを、一人で判断しなければなりません。
B君の飼い主様には、電話で、
『これから作成する分のチラシは、できるだけ手渡しで行った方がよろしいかと思います』
というアドバイスをしたわけですが、一人ではやはり、実行に時間がかかってしまうことでしょう。
それでも頑張って頑張って、ようやくB君の姿を見かけたとして、です。
今度は、どうやって無事保護を目指すかという問題に直面するはずです。
その時、B君の飼い主様は冷静に、且つ適切な保護行動を取れるといいけれども……そうではなく、無理に捕まえようとしてしまったら、B君の行方が再び分からなくなってしまう危険があります。
〈続く〉
あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように
富山桃吉