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飼い猫様の窃盗 131

しばらく続いた深刻な雰囲気に言葉を挟んだのは、S君の飼い主様でした。

「……B君の捜索に携わるおつもりですか?」
「それは……現段階では、正式にご依頼を受けているわけではありませんので、なんとも……。今は、B君の飼い主様に目撃情報の電話を差し上げ、少しのアドバイスをしただけに過ぎませんし」
「それでも、B君とB君の飼い主さんのことを心配し続けるのでしょう?」
「それは、まあ……忘れるということはありませんけど……」

もしも、です。
B君の飼い主様から再び連絡があり、正式な捜索ご依頼を承った場合、捜索中、私を捜し回っている男たちに再び遭遇してしまう危険は避けられないでしょう。

だからといって、そのことを理由にご依頼を断るつもりはありませんでした。
男たちに見つかり、下手をして捕まってしまえば、どういう目に遭わされるか……という怖さは、正直、あります。

しかしながら、私が一番に考えていることは、それではありません。
男たちに見つからないようにしながら、どんな方法で捜索を実行するのがより効果的なのか……。
その点についてが、考えの最優先事項でした。

それを私が口にすると、S君の飼い主様は、祈るように膝の上で両手を結びました。
そして、小さいながらも、私の心まではっきりと響く声でいいました。

「捜索依頼を受けるか受けないかは関係なく、なにかご協力できることがあれば、仰ってください」

驚いてS君の飼い主様の顔を見ると、その瞳には強い光が宿っていて、覚悟にも似た頑なさを私は感じました。
そうかと思えば、です。
S君の飼い主様は一転、自信なさげに自嘲気味な笑みを浮かべました。

「あ、でも、その……もちろん、プロとは比較になりませんけどね」

そういった矢先、S君の飼い主様は今度、真剣な表情に変わりました。
その瞳には、強い光が再び宿っています。

「迷子猫の捜索経験者として、自分自身、その大変さや辛さは痛いほど分かっています。その経験があるからこそ、もしかしたらB君の飼い主様の助けになれることがあるかも分かりません。だから、なにかご協力できることがあれば、ぜひとも仰ってくださいね」

ここまで真っ直ぐにいわれると、その意思を無碍にすることは憚られました。

「分かりました。捜索の正式ご依頼の有無に関係なく、なにかあれば、ご相談させて頂きます」
「お願いします」

その後は、さして取り留めの無い話を交わしながらの移動となり、私たちは病院に着きました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉