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飼い猫様の窃盗 15

諸々の状況を鑑みて、このまま5分間待って様子見することを私は選択しました。
その間、大柄な男が車内に入ったこと以外特筆すべき物音や気配はせず、時間だけがただ流れて行きました。

やせ細った男は、一体どこでなにをしているのだろうか……。
5分が経っても尚、その姿を確認できませんでした。

もしかしたら……。
神経を研ぎ澄ませていたとはいえ、私が気づかぬ内に、フラップが閉まったであろう捕獲器の確認を済ませたのかもしれない……。

そんなふうに、幾ばくかの不安と後悔が沸き上がった矢先のことでした。
再び、カシャンという金属音が聞こえてきたのです。

今度は左前方の位置からではなく、私の真正面の方向で、もっと距離が遠い位置からでした。
ちょっとした広場を挟んだそこもまた、草木が生い茂っている場所です。

やはり男たちはまだ捕獲器を仕掛けていて、しかも、複数箇所にまたがっている模様です。

たった今フラップが閉まったと推測できる捕獲器の中に入ったのは、先ほどのキジトラ猫様なのか……。
あるいは、ほかの猫様なのか……。
ハクビシンやネズミなどの野生動物様なのか……。
何かのはずみでフラップが閉まっただけなのか……。

このまま待機している限りは、それらのどれにも確証の印を押せません。
であるからして、とりあえず、先にフラップが閉まったとおぼしき捕獲器の確認に動くことに決めました。

私は出来るだけ音を出さないようにしながら、左前方に向かって足を進めました。
そうはいっても、一歩足を踏み出す度に立ち止まっては、周囲の変化に気を配りながらなので、なかなか進みません。
焦ってはダメだ、と自分にいい聞かせながらの動きはぎこちなく、傍から見れば滑稽なそれと映るでしょう。
だけれども、今はそんなことはどうでもいいと開き直り、私は可能な限り先を急ぎました。

そうこうしながら、捕獲器が仕掛けてあるだろう目当ての位置まで、あと半分くらいの距離に来た時、私は大柄な男が乗り込んでいるバンの方向に目をやりました。
草木が邪魔してよく見えない状況ではありましたが、おそらくは変化なしであるように思われます。

やせ細った男の行方は、相変わらず不明のままでした。
現在私がいる場所の近くにも、まったくといっていいほど気配を感じません。

私はもう一度、自分が目指す進行方向に目を戻しました。
何かを踏んで音が出ないように足元をいちいち確認し、足の上げ下げを繰り返していきます。

そのまま進むこと数分後。
ようやく、目星を付けた場所まで辿り着きました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉