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飼い猫様の窃盗 20

男たちは、直ぐ近くの曲がり角に潜んでいる私にまったく気づいていないようで、こちらに目をやることもなく、公園内に消えて行きました。
やせ細った男は、先ほどキジトラ猫様を捕らえていた捕獲器が設置してあった方の茂みの中へ、大柄な男は、ハクビシン様を捕らえていた捕獲器が設置したあった方の茂みの中へ入って行こうとしています。

この隙に、バンの中を確かめられる!

絶好の機会を逃すわけにはいきません。
何としてでも捕らわれの猫様たちを解放してあげたい私は、息をのみ、靴ひもをきつく結び直しました。
ついでに、足首や膝や腰などのストレッチを出来る範囲で済ませます。
そうして、いつでもバンに向かって走れる態勢をとりました。

やがて、男たちの姿は茂みの中に吸い込まれていき、完全に消えて見えなくなりました。
それでも尚、慎重さを重ねて、私は心の中でカウントダウンを始めました。

10……9……8……7……6……5……4……3……2……1……。
GO!

私は提げていたショルダーバックを抱え込み、わき目もふらずに走り出しました。
そうして一気にバンに近づくと、とりあえずは、公園から遠い方のフロントウインカーの陰に屈みこみました。
そのままの姿勢でバンの車体を伝い、バックドア側に移動しました。

ふぅー……。
ふぅー……。
ふぅー……。

乱れた呼吸を整えることもなく肩で息をしながら、私はバンのリアコンビネーションランプ越しに半身を出し、男たちが消えて行った方の確認をしました。
右を見ても左を見ても、男たちが戻ってくる気配はありませんし、ほかにも特段の異常はなさそうです。

続けざま、スマフォを取り出しました。
静止画を記録するカメラモードをタップし、バンのナンバープレートを撮影しました。
念には念を入れ、バンが履いているタイヤとサイドミラー、分かりやすいボディのキズなども画像に収めました。
すべては、万が一、男たちに見つかったり逃げられたりした場合の備えです。

それらの写真がしっかりと保存されていることを確認したつぎは、いよいよバンの中を調べる番です。

私が盗み聞きした、大柄な男の通話では確か、

「この公園では、今のところ四匹。だから、合わせて、八匹」

と口走っていたはずです。
となると、このバンの中には八匹の猫様が捕らわれていることになります。

その中に、私が捜索している猫様がいるかもしれない!

自然と、私は高揚感に包まれ、身体に力が入りました。

よし、開けるぞ!

私は、バンのバックドアに手をかけました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉