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飼い猫様の窃盗 22

私は急いで、ナンバープレートを含めたバンの中ぜんぶが写るように証拠写真を撮りました。
続いて、猫様たちの個別写真も撮りました。

「みんな、今から逃がしてあげるからね!」

それぞれの目を見てそう伝えた私は、てきぱきと動き、猫様たちの解放作業に移りました。
バックドアを全開に開きっぱなしが故、遠くからでも男たちに気づかれてしまうので、一刻でも早く終えなければなりません。

先ずは、バンの中の手前に並べられた捕獲器三つを地面に下ろし、それぞれのフラップを開け、顔見知りの猫様たち三匹を解放してあげました。

「もう二度と、捕獲器には近づいちゃダメだよ。ほかの猫様にも伝えてあげて」

茂みの中で解放してあげたキジトラ猫様に伝えたのと同じ言葉をかけながら、それぞれべつの方向に逃げて行く猫様たちの後ろ姿を見送りました。

私はつぎに、バンの一番奥に積み込まれている捕獲器を地面に下ろしました。
この子はボス猫様らしさそのままに気が強いので、フラップを開けようとした際にフーッと威嚇されました。
それでも直接的に攻撃をされることはなく、フラップを開けた途端に、脱兎のごとく逃げ去って行きました。

ところが。
その後ろ姿を見つめながら、ほかの猫様にも伝えた同じ想いを伝えていると、ボス猫様はふいに立ち止まってこちらを振り返りました。

”……どうしたの? キミを捕まえた男たちが戻ってくる前に早く行きな!”

私の投げた想いが通じたかどうかは分かりませんが、ボス猫様は再び走り出し、住宅街の合間に消えて行きました。

ボス猫様のその一挙手一投足から、様々なものを私は感じました。

野良猫様として生きる彼らの悲哀。
あるがままの気高さ。
包み隠すことなき生命力。
運命を潔く受け入れる姿勢。
曲がることを知らない強さ。
飾ることなき感情。

自然と身に纏うそれらから、私はただただ儚さを感じ、憧れ、畏敬の念を抱きました。

人間側の都合が作り出した環境や社会がいかなるものであっても、彼ら野良猫様はこれからも、彼ららしく生きていくのに間違いはないでしょう。
今の時代や今の日本だけに限らず、どんな時代のどこで生まれてこようとも、野良猫様たちは、それについて不平不満を並べ立てたりはしません。

地域猫に対するTNR活動が盛んになろうとも、都市開発で生活場所を追われようとも、心無い輩に虐待を受けようとも、嘆いたり、ふてくされることもせず、彼らは昨日や一昨日を生きてきたのです。
今日だって、明日や明後日だって、彼らは生きるだけです。

翻って、私たち人間はどう生きているのか……。
私は、どう生きたいのか……。
思わず、憂愁を帯びた溜息が漏れ出てしまいました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉