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飼い猫様の窃盗 23

感傷に浸る私を現実に引き戻したのは、まだ捕獲器の中に残されているキジ白猫様の内の一匹でした。
そのキジ白猫様が発した、かすれた高音の小さな鳴き声は、

「早く、この中から出してくれよ!」

といっているように、私には聞こえました。

とはいえ、私は躊躇していました。
なぜならば。
先に逃がしてあげた四匹は見知った顔で、元々この近所で生きている猫様たちであることに間違いはありませんが、目の前にいる四匹のキジ白猫様たちは、べつの地域で生きてきたであろう子たちだからです。

この場で解放してあげることは即ち、この地域で生きていくことになります。
はじめて暮らすことになるこの地域で、彼ら四匹のキジ白猫様たちは、上手く生きていけるのであろうか……。
私の心配は、真っ直ぐとそこに向けられていました。

かといって、彼ら四匹が暮らしていた地域を私は知りません。
それを知る唯一の術は、男たちに問いただすことですが……それは賢い選択とはいえないでしょう。
勝手に四匹を解放している以上、すんなりと教えてくれる可能性は極めてゼロに近いでしょうし、それどころか、解放した張本人が私だと知れば、どんな報復を受けるか想像もつきません。
私が今解放してあげなければ、彼ら四匹は、男たちに運命を委ねる羽目になってしまいます。

そんなふうに考える合間にも、時間は刻々と流れていきます。
その分だけ、男たちに見つかってしまう危険性が高まっていきます。

どうしたものか……。
どうしてあげるべきか……。

もうしばしの間悩んでいると、さっきのキジ白猫様が、今一度かすれた鳴き声を発し、

「早く、この中から出してくれよ! 早く! 早く!」

と懇願してきました。

そう……だよね。
そうだね!

背中を押された私は、四匹を解放する決断をしました。
彼らが、この地域で上手く生きていける保障はありません。
ですが、このままの現状よりは希望を持てる選択に、彼らの生き方に、私は賭けてみることにしたのです。

そうと決まれば、動きに迷いは生じません。
四つの捕獲器をせっせと地面に下ろし、フラップを全開にしてあげました。

途端に飛び出す子もいれば、そろそろと出て行った子もいます。
その後は、何よりも身の安全の確保に急ぎ、手近に並ぶ家屋の中に隠れた子もいれば、塀の上にジャンプした子もいました。
四匹のキジ白猫様たちはそうやって、新しく始まるこの地域での暮らしに身を投じていきました。

”……みんな、どうか元気で、らしく在れ!”

今の私には、解放してあげた八匹の猫様たちの、彼ららしい生き様の無事を願うことしかできませんが……。
彼らのために目を瞑り、深く祈りを捧げました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉