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飼い猫様の窃盗 24

祈りを捧げ終わり、瞼を開いた私は、地面に下ろした捕獲器をバンの中にそそくさと戻し始めました。
そうしてから、バックドアを閉めようと手を伸ばした時です。

「おい、コラッ! 何してやがる!」

唐突に、背後から、怒鳴り声をぶつけられました。
刹那、反射的に顔を隠そうと、着ていたパーカーのフードを被った私は、俯き加減で振り返りました。

「……テメエ、誰だ!?」

引き続き怒鳴り声をぶつけてきた相手は、まだ距離がある位置にいました。
その両手には、空っぽの捕獲器を持っています。

ですが。
私が知っている大柄な男でもなければ、やせ細った男でもありません。
全身を黒い服で固めた、ニット帽を被った男でした。
二人の男たちが応援を呼んだのか、元々合流する予定だったのかは定かではありませんが、仲間なのは間違いなさそうです。

とにもかくにも、逃げた方がいい!

頭と心に警戒音を響き渡らせた危機感がそう告げるので、私はバックドアを乱暴に閉めた瞬間、提げていたショルダーバックを抱え込み、全速力で駆け出しました。
駆け出して直ぐに、被ったパーカーのフードはめくれてしまいましたが、気にしてる暇はありません。

「おい、この野郎!」

ニット帽を被った男が再び怒鳴った矢先、ガシャガシャンという金属音が弾けました。
その金属音の原因を振り返って確認はしませんでしたが、おそらくは、ニット帽を被った男が、手に持っていた捕獲器を地面に離したのだと思います。

「待て、コラッ!」

沸き起こる怒りに任せた勢いで私を追いかけてきたことが分かったのは、ニット帽を被った男が履いている靴のせいでした。
その靴音から察するに、どうやら革靴を履いているようです。
だとしたら、走るに適しているとはいえません。

一方の私はスニーカーなので、ショルダーバックを抱えているとはいえ、走りにさほどの支障はありません。
加えて、ニット帽を被った男が地面を蹴るその靴音で、ある程度の距離感を掴めるのが、逃げる私には有利に働きました。

また、この周辺は迷子猫様捜索で散々歩き回っているが故、立地について詳しいことは、すでに『飼い猫様の窃盗 13』で記した通りです。
以上のことから、追いかけられても、私に分があると判断出来ました。

これなら、逃げ切れる!

追いかけられながらの緊迫感の中であっても、私は余裕を失わずにいられました。
右に左に道を折れたり、時には直進で突き放したりを繰り返しているうちに、実際、ニット帽を被った男の靴音との距離は遠ざかっています。

もう少しで、諦めるだろう……。

ニット帽を被った男からの逃げ切りを、私は、ほぼ確信しました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉