新着情報

飼い猫様の窃盗 25

逃げる最中に駆け上がったアパートの階段踊り場で、私はしばしの間、呼吸を落ち着かせることに努めました。

追いかける途中で私を見失ってからというもの、ニット帽を被った男の姿は見当たりません。
私を見つけることを諦めて、バンに戻ったのか……。
路上に放置したままではまずいので、一旦、捕獲器を回収しに戻ったのか……。
はたまた、大柄な男とやせ細った男に緊急連絡を入れて合流しに行ったのか……。
いずれにしても、捕獲した猫様たちを私に逃がされた事実に、相当な怒りを覚えていることでしょう。

急に走り出したがためにパンパンに張った脚の筋肉をほぐしながら、この後に起き得るであろう事態の推移を私は考えました。

予想できる一つとしては。
ニット帽を被った男からの報告を受けた大柄な男とやせ細った男が、猫様たちを解放した人物が私だということに気づくことです。
目撃されたのが遠目だったにせよ、被ったパーカーのフードは逃走して間もなくめくれてしまったので、ニット帽を被った男に、私の髪型の特徴は掴まれています。
服装についてもそうですし、抱えていたショルダーバックについても、ニット帽を被った男に記憶されていると考えるべきでしょう。

尚且つ、真夜中の住宅街が故、周辺を歩いている人物は、三人の男たちと私以外にはいません。
よって、男たちからすれば、猫様たちを解放した人物の特定は容易でしょう。

以上をすり合わせれば、私に不利な状況なのは否めません。
男たち三人がかりで捜されたら、見つかるのも時間の問題といえそうです。

となると。
身を隠すものがないこの場所で、いつまでも潜んでいるのが得策なのか……迷いどこでした。
三人のうち誰か一人であっても、このアパートの階段を上がってこられたら、あっさりと追い込まれてしまいます。

かといって。
べつの隠れ場所を見つける、またはどこか遠くへ避難するためにこの場所を離れるのも安全とはいい切れないでしょう。
移動の最中に見つかってしまうリスクの回避は、簡単なことではなさそうです。

事態の推移予想で考えられる、もう一つとしては。
自分たちが猫様を乱獲している事実を私という第三者に知られたことに、男たち三人が危機感を覚えることです。
猫様たちを逃がされた怒りはあったとしても、自分たちの身の安全を考えれば、私を追ってる場合ではないでしょう。
今すぐバンに乗って逃げることを優先することも、充分に考えられます。

正直にいえば、私自身の期待も、そこにありました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉