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飼い猫様の窃盗 5

捕らわれている猫様たちの鳴き声が止んだ夜のしじまに、携帯電話のバイブレーション音が鳴り渡りました。

……まずい!
見つかってしまう!

瞬間、焦った私は息をのみ、携帯電話をしまっていたズボンの後ろポケットを押さえました。
迷子猫様の目撃情報提供者か、私の知人からの着信だと思ったからです。

けれども、それは杞憂どと直ぐに気づきました。
着信が入ったのは、男の携帯電話だったからです。

胸をなでおろした私の耳に聞こえたのは、着信に応対した男の声でした。
そのままバンのバックドアを開いて、捕獲器を中に積み込んだ男の言葉は、相変わらず日本語とは違うものだったので、なにを話しているのか定かではありません。
それでも私は、男の会話からなんらかのヒントを得ようと聞き耳を立て続けました。

しばらくすると、男は会話の途中で少し黙りました。
通話が終わったのかと考えた私でしたが……そうではなく、男は再び話を再開し始めました。
しかも、今度は拙い日本語を発しています。

「大丈夫。問題なし。もうすぐ終わり」

おそらくは、猫様たちの捕獲作業のことだろうと察しがつきました。

「この公園では、今のところ四匹。だから、合わせて、八匹」

どうやら、男たちは複数個所に捕獲器を仕掛けているようでした。
現時点では、その場所の特定ができないものの、こうなるとますます、私が捜索を行っている迷子猫様の身が心配になりました。

「オーケー。ぜんぶ終わったら、また電話を入れる」

通話を終えたらしき男はタバコを吸うようで、ジッポーライターの着火音がしました。
直に、タバコの煙が夜空にのびていき、辺りに甘ったるい臭気が漂いました。

男がこのままバンを離れないのだとしたら、捕らわれの猫様たちの確認ができない……。

どうしたものかと、私は考えを巡らせました。
けれども、一向に、良い案を見つけられません。

そうこうしている内に、やせ細った男までもがバンに戻ってきてしまいました。
手にはやはり捕獲器を持っていましたが、その中に猫様の姿はないようでした。

ということは……。

空っぽの捕獲器を回収したとなれば、男たちはこの公園での捕獲作業を終え、別の捕獲ポイントへ移動するつもりなのかもしれません。
万が一、私が捜索を行っている迷子猫様がこのバンの中にいたとしたら、そのまま行方知れずになってしまいます。

それだけは、絶対に避けなければ……。

どうするべきなのか、私はいよいよ選択を迫られました。
そして、一つの決断を下しました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉