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飼い猫様の窃盗 52

私の説明が、多少なりともネガティブ思考を払拭できたのか、飼い主様の声色は明るみを帯びました。

「これからは、なるべく前向きに捉えるようにします。Sの捜索はまだ続くので」
「その勢いですよ。お節介ながら、飼い主様の体調の早期回復を、私も心よりお祈り申し上げております」
「ありがとうございます」
「また、なにかお聞きになりたいことがあれば、遠慮なくご連絡ください」
「はい。今日は本当にありがとうございました」
「では。ご体調が万全でない中、長々とお邪魔致しました。失礼致します」

今回は、この会話をもって、飼い主様とお別れしました。
退院まではもどかしいでしょうが、沈み込んでいた飼い主様のモチベーションが上向きになっただけでも、来院した甲斐がありました。

その二日後の15時頃、飼い主様から着信がありました。

「もしもし。この前、Sの件で相談した者ですが」
「はい。この前はどうも」
「こちらこそ。あの、今お時間大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。どうしました?」

退院の目途がついたのかと勝手に思いましたが、そうではありませんでした。

「実はですね。先ほど、Sの件についてお電話を頂いたのですが……」
「そうなんですね。ペット探偵側から連絡があったのですか?」
「いえ。そちらからはまったく。自分で配ったチラシの方を見て、連絡を頂けました」
「なるほど。それで、どういった内容なのですか?」

新たな目撃情報提供者からなのか、これまでの三つの目撃情報提供者からなのか、私は飼い主様の言葉を待ちました。

「それが……Sを目撃したという内容ではなかったのです」
「……と、仰いますと?」
「本当だとしたら、口にするのも恐ろしい話でして……。できれば、会ってお話できればと……」
「分かりました。では、そうですね……本日ですと、19時半頃ならばお伺いできますが、いかがでしょう?」
「大丈夫です。面会時間は20時までですから」
「承知いたしました。それでは、後ほど」
「お待ちしております」

『本当だとしたら、口にするのも恐ろしい話でして……』とは、一体、何なのか……私は、否が応でも気になってしまいました。
少なくとも、飼い主様の不安を煽る内容なのは間違いありません。

目撃情報を装ったイタズラ電話の類があることは、この案件に限ったことではないので、その可能性も有り得ます。
または、猫様嫌いの人物が、嫌味をいうためだけに電話をしてくることもあります。
そういった電話をかける輩は、大抵が暴言を吐くので、飼い主様の心が傷ついていないことを願いました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉