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飼い猫様の窃盗 6

こうなったら、小細工なしに、面と向かって問いただすしかない!

身を潜めていた私は、男たちの前に出ようとしました。
そのタイミングで、バンの中に積み込まれた一匹の猫様が暴れたようでした。

ドギャンッ!
グオーンッ!
グギャアアアッ!

その暴れっぷりと怒りを交えた唸り鳴きに、男たちもさすがに吃驚し、暴れている猫様に向かってごちゃごちゃと文句を言い放ちました。

けれども、それは逆効果で、猫様がより興奮を高めたのが私には分かりました。
案の定、猫様の暴れっぷりが収まる気配はありません。

やがて。
無意味な暴言を続けていた男たちは業を煮やし、バンのバックドアを乱暴に閉めました。

出ていくならば、今だ!

出現を少しでも怪しまれない絶好の機会だと睨み、男たちの狼狽に乗じて、私は足を踏み出しました。

「どうしました? 大丈夫ですか?」

ぎょっとした男たちの間抜けな眼差しが、私の顔を瞬時に捉えました。
私はあえて、淡々と言葉を続けました。

「なにか、お困りですか?」

申し合わせたように、男たちは互いに目を合わせ、今度は鋭い目つきで私の全身を見回しました。

威圧で追い払うか……。
愛想よく接して、なにごともなくやり過ごすか……。
それとも……。

私に対してどう対するべきか、瞬時に考えているようです。
その様子は予想の範疇だったので、私はただただ男たちの出方を待ちました。

すると。
むやみに責め立てることもなく、やたらと怪しむこともない、そんな私の素振りに、大柄の男は一先ず、”威嚇(タバコの吸いさしを、ぶっきらぼうに地面に投げ捨てる)”という仕草で応じました。

それでも怯まず、探る意図を持って私は繰り返します。

「大丈夫ですか? なにかお困りのようでしたが?」

やせ細った男の方が、わざとらしく目を大きく見開き、

「大丈夫。大丈夫」

と、首を振りました。

そのリアクションを見た大柄の男は、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべました。
当然でしょう。
やせ細った男のリアアクションは、日本語が通じることを意味してしまったからです。

大柄の男の考えの中にはおそらく、日本語が通じないフリで逃げ切る選択肢もあったに違いありません。
ですが、やせ細った男の失態によって、それは消失したわけです。

この短いやり取りの結果、私の意図を察していた大柄の男の方が、一筋縄ではいかないということが分かりました。
ならば、ここから先の展開は大柄の男との駆け引き次第になりそうなので、私の集中は自然とそこに向かいました。

〈続く〉

あなた様とあなた様の大切な存在が
今も明日もLucky Lifeを送れますように

富山桃吉